
Photo : Masataka Nakada (CLOCK)
Text : Hirohito Iso
Edit : Shin Kawase
Mizuno Sportstyle
2025 Spring / Summer Best Selection
by SHOES MASTER
ゴアテックスとのコンビネーションでさらに進化。
伝統と革新というテーマを抱き、今では世界中から支持を集めることに成功したミズノスポーツスタイル。
アーカイブに絶妙なエッセンスを加え、単なる復刻ではなく、新しいものへと昇華させる手腕はまさに職人技。
今季も、独自のアレンジを加えた魅力的なラインナップが登場した。

WAVE PROPHECY MOC GTX
Mizuno Sportstyle
2025 Spring / Summer Best Selection
by SHOES MASTER

WAVE PROPHECY MOC GTX
Triple Black
¥37,400
ミズノの伝統と革新を表現する象徴的な存在として地位を確立したウエーブプロフェシーモックは、昨秋にアッパーをレザーからプレミアムスエードにリニューアルするなど、今なお進化を遂げている。そして今季はさらに一歩前進し、全天候で活躍すべくゴアテックスを搭載。リフレクター素材をドットで組み込んだスペアシューレースも用意し、別の表情を演出できる。カラーはトリプルブラックとブラック×ホワイトの2色をラインナップし、ファッショニスタからスニーカーヘッズまで、広く期待に応えた一足が完成した。



WAVE PROPHECY MOC GTX
Black / White
¥37,400

WAVE MUJIN LS GTX
Mizuno Sportstyle
2025 Spring / Summer Best Selection
by SHOES MASTER

WAVE MUJIN LS GTX
¥25,300
トレイルランニングモデルのウエーブムジン10をベースにゴアテックスを搭載し、スニーカーシーンにフィットするようアレンジされた一足。今作では、ジャガードメッシュのアッパーにヴィブラムソールを採用し、トレイルランシューズとしての表情は踏襲しつつ、ランバードロゴのサイズ感やカラー、素材使いなど、タフさの中に洗練さを感じる都会的なデザインに仕上げている。また、ミズノエナジーやフルレングスウエーブなどのテクノロジーも搭載、側面にあるリフレクタープリントで施した「X」のデザインもポイントとなっている。


INFORMATION
ミズノお客様相談センター
0120-320-799
jpn.mizuno.com/mizuno1906
Mizuno Sportstyle × GORE-TEX Brand
Evolving Mizuno Sportstyle
Takeshi Saito (Mizuno Sportstyle)
Yasuhiro Hirai (GORE-TEX Brand)

ミズノスポーツスタイルが画策する
ゴアテックスブランドとのパートナーシップ
今や日本のみならず、フランスをはじめとするヨーロッパ諸国、韓国や東南アジアでも人気を博しているミズノスポーツスタイル。今シーズンは、大人気モデルとなったウエーブプロフェシーモックのゴアテックスフットウェアバージョンがついに登場。今や説明不要のゴアテックスブランドとミズノスポーツスタイルの2社は、強いパートナーシップで結ばれ、新たな展開を画策しているそうだ。その新たな取り組みについてキーマン2人を取材した。
“ゴアテックス”の今と未来について
–––“ゴアテックス”の何が優れているから、ここまで支持されていると思いますか?
平井 ゴアテックスブランドが始まって、もうすぐ50年になります。現在に至るまでずっと素材のブランドとして継続してきて、今でも支持されている理由は、やはり実体験や口コミの評判が大きいと思います。「“ゴアテックス”なら大丈夫」といった安心感や信頼感を多くの方が抱いてくださっていることが要因ではないでしょうか。さらに昔に遡ると、ゴアテックス製品はエベレストに代表される8,000メートルの山々や過酷な環境で、人間の限界を引き上げる役割を果たしてきました。そのような極限の場で培われた実績が、今では日常生活に溶け込み、スニーカーや普段着として活用されているというのは、私たちにとっても感慨深く、誇りに思えるストーリーです。この歴史的背景が、多くの素材メーカーがある中でも、ゴアテックスがブランドとして認知され、愛され続けている理由だと思います。

日本ゴア合同会社
GORE-TEXブランド
アカウント マーケティング
平井康博
–––平井さんの今の活動を教えてください
平井 私はアカウントマーケティングスペシャリストとして、パートナーブランドやリテーラーの方々とともにゴアテックス製品の魅力を発信する、いわゆるB to B to C 領域での活動をしています。具体的には、シューズブランドやライフスタイル系アパレル、スニーカーショップを主に担当していて、主な業務内容は、プロモーションの共同企画や展示会や店頭ディスプレイのサポート、販売員の方向けの勉強会の実施など、多岐にわたります。これらを通じて、ゴアテックス製品についての理解を深めていただくだけでなく、パートナーブランドとゴアテックスブランドをつなぎ、新たな可能性を広げていくことを目指して活動をしています。
–––ゴアテックスブランドが目指す未来は、どのような未来でしょうか?
数年前に新たに掲げられたゴアテックスブランドのプロミス“Going Further Together”には、情熱を持って挑戦する人々や日常的なアクティビティに寄り添い、“共に、もっと先へ”進んでいくサポートをしたい、という思いが込められています。我々のブランド価値は、品質や信頼を維持しつつも、時代に合わせて創造的なイノベーションを追求していくこと。科学素材メーカーとして、これが未来に向けた私たちの役割だと思っています。ですがまだ多くの人がゴアテックスフットウェアを雨の日用として認識しています。実は透湿性が確保されているので、晴れの日でも快適に過ごせます。私もどんな天候であっても、ほぼ毎日、10年ほど愛用してそれを実感しています。雨の日はゴアテックスフットウェアが必要ですが、晴れの日には必ずしも必要ではないと感じることもあります。しかし、あると安心できる心理的な快適性があることは間違いなく、そういったベネフィットを伝えていくことでもっと多くの人が「やっぱり“ゴアテックス”があった方がいいよね」と思うようになるのではないかと。素材メーカーとして技術革新をさらに推し進めて、もっと、ゴアテックスフットウェアが標準的な機能として定着し、ユーザーさんが天候を気にすることなく靴選びをもっと楽しめる世界になることを目指しています。極論ですが、すべての靴がゴアテックスフットウェアになることが、私の目指すところですね(笑)
–––平井さんが考える「理想のシューズ」とは、どんなシューズでしょうか?
「いい靴」とは、履いていることを忘れさせるものだと考えています。スポーツやアウトドア、日常生活においても、その人がアクティビティに夢中になれること、靴のこと気にしなくてもよい状態です。人は靴が不快であることは認識しますが、快適であれば気にすることはありません。ゴアテックスフットウェアのテクノロジーは、雨や雪、寒い風の日でも心配なく、ムレも逃がしてくれるのでどんな天候でも快適でいられる、そこまではゴアテックスフットウェアの機能で実現できると考えています。その上で、快適なだけでなく履くだけでワクワクしたり、高揚感を与えてくれるデザインやテクノロジー、ストーリーを感じられるものが「理想のシューズ」だと思います。それはブランドさんとのものづくりがあって初めて実現できる領域だと考えています。
ゴアテックスブランドとの今までの取り組みと未来について
–––今までのミズノとゴア社の取り組みの変遷を簡単に教えてください
齊藤 ランニングやウォーキングのモデルでは2016年から展開していましたが、スポーツスタイルとしては2022年の春夏シーズンから本格的に始動しました。きっかけとなったのはトレイルランニングシューズのソールを搭載したウエーブムジンTLで、その後、ノンネイティブとのコラボレーションへと発展しました。ノンネイティブとのコラボレーションモデルは、より機能性を重視する中において、ゴアテックスブランドとの共同開発は、その後もミズノスポーツスタイルに大きな影響をもたらすターニングポイントになりました。ゴアテックスブランドとの取り組みは、ウエーブムジンからスタートし、その後、ウエーブライダーベータに採用し、2025年春夏には新作モデルのウエーブムジン LS GTX、ウエーブプロフェシーモック GTXに受け継がれ、3月に発売になります。

ミズノ株式会社
グローバルフットウエアプロダクト本部
齊藤健史
–––齊藤さんが考える他にはない「ゴアテックスの一番の魅力」とは何でしょうか?
齊藤 ゴアテックスといえば高い防水性が広く知られていますが、実は「透湿性」も大きな魅力のひとつなんです。雨や水は通さないのに、体から発せられる蒸気を逃がしてくれるという機能は相反するもので、正直なところ、私自身も最初は半信半疑でした。しかし、何度も実際に履いてテストを重ねるうちに、その優れた快適性を実感しました。水は通さないのに、足は全く蒸れを感じさせない。この機能こそが、まさに唯一無二な魅力だと思います。また、ノンネイティブとのコラボレーションで一緒に開発したブーツ、ウエーブムジン TLに採用した伸縮性のあるゴアテックスファブリクスには驚かされました。ゴアテックスメンブレンには伸縮性がないと認識していたのですが、伸縮性のある生地とラミネート加工をしたストレッチタイプも存在していて、当時、私はシューレースのないソックスのような仕様を構想していたので、提案をいただいた時は晴天の霹靂でした。素材そのものの優れた特性だけでなく、さまざまなニーズに応じて進化を続けている点にも感銘を受けました。ミズノもまだまだ発展途上のブランドですが、ゴアテックスプロダクトのロゴが入ることで、消費者にとっての安心感が生まれるのは間違いありません。それによって、ミズノのプロダクトへの信頼も高まる。ロゴが持つ強さ、ブランド力の大きさを改めて実感しています。

ウエーブムジンTL MID GTX ノンネイティブのプロトタイプ(原型)
–––未来に向けたゴアテックスブランドとの取り組みについて教えてください
齊藤 ミズノのスポーツスタイルとしては初めての試みとなりますが、ウエーブプロフェシーモック GTXのリリースに合わせて、ゴアテックスブランドとの共催イベントを計画しています。開催場所は未定ですが(インタビュー当時)、水などが想起できるような、ゴアテックステクノロジーとの親和性を体感できるロケーションを検討しています。今回のイベントでは、単に新商品のリリースにフォーカスするのではなく、パフォーマンスシューズとは異なる視点から発信することを重視しています。我々のカジュアルシューズカテゴリーから提案することで、アウトドアや非日常のシーンでの活躍をより具体的にイメージしていただき、ゴアテックスを搭載したシューズの街履きにおける有用性を伝えられるのではないかと考えています。
※ゴアテックスブランドとの共催イベントは、
3月6日 (木)19時から、東京・巣鴨の
共同浴場『稲荷湯』を貸切って行われる。
ミズノ スポーツスタイルについて
–––ミズノ スポーツスタイルの魅力とは?
平井 スタイリッシュなデザイン性だけでなく、ミズノのテクノロジーやイノベーションが、高い次元でライフスタイルシューズへと落とし込まれている、というのが最大の魅力ですね。何度も試作を繰り返したというノンネイティブとのコラボレーションのエピソードを聞いても、それを強く感じます。ゴアテックスフットウェアに関しても、製品が量産化される前に、ゴア社のラボで厳格な検査を行い、防水性や透湿性が基準を満たしているかを必ず確認しています。また、生産も同じくゴア社の認定を受けた工場で製造する必要があり、一般的な靴作りとは異なる、非常に高いハードルが設定されています。ただ、その厳格な環境がある中で、ゴアテックスファブリクスを搭載すること自体が目的になってしまうケースも少なくありません。例えば、ゴアテックスファブリクスとニット素材を組み合わせることで伸縮性のバランスが崩れ、結果として履きにくい仕上がりになってしまうこともあります。しかし、ミズノはそこを徹底的に追求し、時間をかけてじっくり開発を進めるスタンスを貫いています。そうした開発に対する体力や情熱を、ひとつひとつのプロダクトに注ぎ込んでいるのは日本のブランドならではだと思います。

企画から約4年。5回に渡りサンプルを製作し、試行錯誤を繰り返してようやく完成した
ウエーブムジンTL MID GTX ノンネイティブ
–––平井さんのマイ・ベスト・ミズノスポーツスタイルを教えてください
平井 やはり、ノンネイティブとの初回コラボレーションとなったウエーブムジンTL MID GTX ノンネイティブですね。あと、ウエーブムジンTL GTXの1stカラー、そしてウエーブライダーベータGTX の3モデルです。
–––最後に読者へメッセージをお願いします
齊藤 ミズノスポーツスタイルに求められることのひとつは、機能性の高さだと思います。オンザピッチではもちろん、パフォーマンスを最大限に引き出せるだけでなく、かっこよくて憧れられるプロダクトであること。そして、オフザピッチでもその機能を体感していただけるようにすることが、スポーツスタイルチームとしての目指すべき姿だと考えています。ミズノが培ってきた「伝統と革新」を信念と捉え、機能性を支える重要な要素としてゴアテックスブランドのお力をお借りしています。このリレーションシップを今後も続けながら、そこから生まれるワクワクするようなプロダクトをお届けしていきたいと考えています。何より大事なのは、どこかがやっていることを模倣するのではなく、ミズノスポーツスタイルとしての意味を持たせ表現することです。この点を決して見失わず、私たちだからこそ提供できる価値を追求していきたいと考えています。

平井 シューズマスターの読者の皆さんはもちろん靴好きの方々で、ゴアテックスシューズについてもよくご存知かと思います。靴を選ぶ際に「ゴアテックスの靴」という基準をぜひ今後も取り入れていただきたいと思います。シューズマスターにはミズノに限らず、さまざまなゴアテックススニーカーが多く取り上げられています。「次はどのゴアテックスの靴にしよう」という視点で読んでいただくと、探す楽しさが増し、靴の新しい魅力を発見できると思います。その中で、自然とミズノの靴にも手が伸びてくるのではないかと期待しています。

編集後記
余談だが、齊藤氏と平井氏は、専門学校ヒコ・みづのの先輩、後輩の関係。齊藤氏が「ゴア社との大きなターニングポイントは、ノンネイティブとの共作モデルの開発だった」と語ったノンネイティブの担当スタッフもヒコ・みづの出身だそうだ。そしてまたゴアテックスの開発担当者は、元ヒコ・みづのの講師。偶然にも同じ専門学校出身という縁で結ばれた彼らの次なる一手に期待したい。
取材協力
日本ゴア合同会社
www.gore.co.jp/