Photo : Masataka Nakada (CLOCK)
Interviewer & Edit : Shin Kawase
Product Text : Hirohito Iso

Equipped with Innovative Technology
THE NORTH FACE “VECTIV 3.0” is here

革新的なテクノロジーを搭載した
ベクティブ待望の最新モデルが登場

アウトドアではもちろん、カジュアルシーンでも高いプレゼンスを誇るザ・ノース・フェイス。近年、トレイルランニングシューズ、ベクティブが好評を博しているのをご存知だろうか?2021年の登場以来、幾度となくテストを繰り返した上で改良を重ね、ようやく2025年の最新モデルが完成したとスタッフから連絡があった。満を持しての自信作を取材するため都内にあるザ・ノース・フェイスプレスルームを訪ねた。

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THE NORTH FACE
VECTIV 3.0
SUMMIT VECTIV PRO 3

About VECTIV 3.0
Norihiko Yoshimura (THE NORTH FACE)
Interview

吉村憲彦 / 株式会社ゴールドウイン ザ・ノース・フェイス事業本部 フットウェアグループMD

ベクティブシリーズについて

–––あらためて、ザ・ノース・フェイスが2021年にベクティブシリーズを開発した理由を教えてください
最大の目的は、アスリートたちを勝利へ導くことです。100マイルレース(約160キロ)において、いかにエネルギーを抑えつつ効率よく走れるか。そのパフォーマンスの最大化を追求しています。ノース・フェイスの強みである、契約する世界中のトップアスリートとのつながりを活かし、何度もプロトタイプを作成しました。実際に履いてもらい、フィードバックを受けながら改良を重ねるというサイクルを繰り返してきました。初代のローンチは2021年で、そこから2年にわたり試行錯誤を続け、特に2代目での進化は大きかったと感じています。ミッドソールの素材やプレートの形状をアップデートすることで、さらなるパフォーマンス向上につながり、実際に大会での上位入賞を後押しできている実感もあります。そして今回のベクティブは、これまでの進化をさらに推し進め、現時点で「完成形」と言っても過言ではない理想的な仕上がりになりました。

Trail Runner : Koji Morimoto Photograph by SIMPEI KOSEKI

–––ベクティブを購入する方の男女比、年齢層を教えてください
今回の3モデルのユーザーデータを分析すると、プロは男性が中心で、その割合は9:1です。スカイも男性が多く、8.5:1.5程度の比率です。一方、エントリーユーザー向けのエンデュリスは6:4と、男性が多いものの、比較的女性の割合も高くなっています。年齢層は30代から50代がメインで、特にエンデュリスは女性ユーザーが増えている傾向があります。また、トレイルランニング用途だけでなく、ライフスタイルシューズとして普段履きしている方もいて、幅広い層に支持されていることが特徴です。

–––ベクティブのコンペティターといえば?
大会で上位ランカーに選ばれるなど、パフォーマンスシューズとしての認知は広がりつつあります。しかし、一般的には「ノース・フェイスにシューズがあること自体を知らない」という方も依然として多く、現時点では競合を意識する前に、このボリュームゾーンへのマーケティングが最優先課題となっています。そのため、まだ競合について深く議論できる段階ではありません。とはいえ、シェア率の高いブランドや新しく参入しているブランドなど、各社のクオリティの高さは非常に印象的です。今後、市場全体の人口が大きく増える見込みは少ないと考えており、ボリュームゾーンは激戦区。そんな中、昨年4月にノース・フェイスがスポンサードする大会で、嬉しい結果が得られました。弊社スタッフによる独自調査ではありますが、100マイル部門の約2,000人のランナーのうち、トップ150位までのシューズを目視で確認したところ、ノース・フェイスのシェアは17%でトップでした。この上位150名には契約アスリートも含まれますが、市民ランナーの中でもエリート層に受け入れられていることが分かり、非常に価値のある結果だったと受け止めています。今後は、大会で上位に入る選手のサポートを強化しながら、一般のライフスタイル市場での認知拡大を目指していくことが理想ですね。

Trail Runner : Koji Morimoto Photograph by SIMPEI KOSEKI

–––ベクティブに何を求めて買って行かれる傾向が強いですか?
やはり、最も重要なのはパフォーマンスの向上だと考えています。トップ選手であれば表彰台を目指すことが目標になりますが、より幅広い層にとっては、ゴールすることや自己ベストの更新が目標になるかもしれません。それぞれのレベルで、自分のパフォーマンスを最大限に発揮できるシューズが求められているのではないでしょうか。私自身もトレイルランニングをしていますが、シューズによって快適さや走りやすさが大きく変わることを実感しています。また、レース後のダメージの影響についても、トレイルランニングの第一人者である鏑木 毅さんに高く評価していただいています。特に、100マイルといった過酷なレースでは、シューズが合わなければパフォーマンスが半減することもあります。そのため、優れた機能性だけでなく、安心感を提供できるシューズであることが非常に重要だと考えています。

–––ベクティブ全体の特徴を教えてください
最大の特徴は、3Dカーボンプレートです。通常、プレートは反発性を高めるために使用されますが、トレイルではロードとは異なり、「安定性」がパフォーマンスに大きく影響します。この3Dカーボンプレートにより、ブレを抑え、安定感のある走りを実現しています。さらに、つま先から踵にかけて外側に反り上がったロッカー形状のミッドソールと、ノース・フェイス独自の配合で開発されたSurface Control™アウトソールを採用。この3Dカーボンプレートと組み合わせた3つの構造を備えたモデルを、「ベクティブ」と名付けています。

 

最新作ベクティブ プロ 3について

–––最新作となるベクティブ プロ 3のコンセプトと特徴を教えてください
コンセプトは厚みの最大化とパフォーマンスの向上です。パフォーマンスの向上はもともと開発の軸にありましたが、今回は特に厚みの最大化が大きな特徴です。まず、ソール全体の厚みは7ミリ。非常に厚みのある設計ですが、その分クッション性と反発力が格段に向上しています。足を入れて立った瞬間、これまでにない感覚を実感し、そのまま自然と走り出したくなるような履き心地です。

これまでのプロは、高性能ながらも履きこなすのにテクニックが求められ、運転が難しい車のような印象がありました。ロッカー構造に慣れていない人や脚力が十分でない人にとっては、反発性と安定性がむしろネガティブに働くこともありました。しかし、今回のプロ 3は全く異なります。3D構造の進化により安定性が増し、足への負荷が軽減。長時間履いていても疲れにくい設計になっています。最大のポイントは、ソールが5層構造になり、さらに3Dプレートを2枚実装していることです。

競技シューズではルール上の制約もありますが、ロードランニング系シューズを含め、1足に2枚のプレートを搭載するのは非常に珍しい構造です。なぜプレートを分けているのかというと、「反発」と「安定」それぞれの役割を2つのプレートに分担させているからです。従来の1枚構造では、プレート特有の硬さがあり、結果としてトップアスリート向けの仕様になっていました。しかし、デュアルプレート構造では、着地時に直接プレートを踏まず、柔らかいミッドソールのインサート素材が衝撃を吸収。さらに、蹴り出しの際にもこのミッドソールがクッションとなるため、硬さを感じにくく、衝撃吸収にも優れた設計になっています。

–––このカラーリングにした理由も教えてください
カラーも一番はアスリートからのリクエストなんです。特に暑い時期のトレイルレースでは、快適性が重要になります。そのため、パフォーマンス向上の観点から、シューズのカラーを白にしました。白を採用することで、いくつかのメリットがあります。まず、明るいカラーは視覚的な軽さを生み出し、ランナーにとって心理的にもプラスに働きます。また、白は通気性を感じさせる視覚効果があり、さらに濃色に比べて熱を溜め込みにくいため、暑さ対策としても有効です。加えて、白はデザイン面でも優れた選択肢です。シンプルで洗練された印象を与え、スタイリッシュな仕上がりになっています。こうした機能性とデザイン性の両面から、白ベースのカラーリングを採用しました。

–––他ブランドにはない「ベクティブ プロ 3の魅力」とは何でしょうか?
やはり5層構造で、プレートが2枚使われていることも含め、他にはない魅力で、オリジナリティがあると思います。

–––ベクティブ プロ3をどんな人に履いて欲しいですか?
アスリートのパフォーマンスを最大化させるというコンセプトのシューズなので、大会で上位を目指したい方、あとは自己ベストを更新したい方に履いていただきたいと思います。

–––今後、ベクティブ プロ3はどうなっていくと予想していますか?
見た目も非常に洗練されていて、目を引くデザインになっていると思います。構造自体も履いてみたくなるような作りになっているので、まずは実際に履いて、その機能の良さを体感してもらいたいですね。履いてくれる人が増えていけば嬉しいです。一方で、かなり攻めた設計になっているため、正直なところ、人を選ぶシューズかもしれません。無理にすべての方に履いてほしいというわけではありませんが、ノース・フェイスのシューズを履いたことがない方にも、「ノース・フェイスのシューズにはこんなに優れた機能があるんだ」と知っていただくきっかけになればと思っています。ベクティブ プロ 3がコンセプト通りの性能を発揮すれば、自然とトップアスリートの着用率も上がってくるはずです。また、他の2モデルもそれぞれ異なる個性を持っているので、トレイルランニングモデル全体の認知が広がり、少しずつ愛用者が増えていけばと考えています。

SUMMIT VECTIV SKY 2

–––スカイ 2について教えてください
パフォーマンスの最大化を軽量性によって実現させようというコンセプトで、例えば27センチのシューズで240グラムという、とても軽い造りになっています。前作が270グラムなので30グラムの減量が実現でき、さらにラグの高さも以前のモデルは3.5ミリでしたが、1.5ミリ高くしてグリップ力も上がっています。とても足さばきがしやすい設計になっているので、特にショート~ミドルディスタンスのレースで、スピードを出すシーンでは、ぜひ履いて欲しいですね。

VECTIV Enduris 4

–––エンデュリス 4について教えてください
エンデュリスは幅広いユーザーに向けたモデルで、多くの方に履いていただきたい一足です。デザインは最上位モデルであるベクティブ プロ 3と連動しており、特徴的な前足部のウイング状のプレートは、似たような形状をしています。ベクティブ プロ 3はアスリート向けのシューズで、履くことで高いパフォーマンスを発揮できますが、繊細な設計のため、万人に当てはまるモデルではないかもしれません。そのため、ベクティブ プロ 3が合わない方にはエンデュリスをお勧めしています。また、グレーのカラーリングは洋服にも合わせやすく、日常使いにも適しています。いきなりレースや大会に挑戦するのは難しいと感じる方でも、まずは普段履きとしてノース・フェイスのシューズを体感していただくのも良いでしょう。軽めのハイキングにも適しており、幅広いシーンで活躍する一足です。

–––主な展開店舗を教えてください
店舗によって取り扱いが異なるので、詳しい情報はウェブサイトをご覧ください。発売はホワイトデーの3月14日の金曜日になりました。

–––最後に読者へメッセージをお願いします
特にトレイルランニングをされる方には、ノース・フェイスの機能性をぜひ一度足を入れて体感していただきたいですね。また、デザインにこだわりのあるスニーカーファンや、普段はランニングをしない方にもおすすめです。デザイン面でも高い評価をいただいているモデルなので、日常のコーディネートにも取り入れやすいと思います。また、ノース・フェイスのシューズは足幅が狭いというイメージを持たれている方も多いのですが、実際はそんなことはないんです!まずはぜひ、お近くの取扱店で試し履きをして、そのフィット感を確かめてみてください。

 

THE NORTH FACE 2025 Spring / Summer
VECTIV 3.0 Collection
SUMMIT VECTIV PRO 3
SUMMIT VECTIV SKY 2
VECTIV ENDURIS 4

SUMMIT VECTIV PRO 3
¥33,000

ザ・ノース・フェイス契約アスリートによる数々のテストとフィードバックをもとに誕生した初代ベクティブから4年、幾多の改良を重ね、今季バージョン3.0へと進化した3代目モデルが登場。トレイルランニングシーンでの使用を前提にデザインされた5層構造のソールユニットが最大の特長で、カーボンとTPU&リサイクルカーボンの2枚のプレートが、“速く、遠くに”というベクティブの特性を最大限発揮してくれる。また、このシューズの魅力は機能性だけでなく、クリーンなそのルックスにもある。ホワイトをベースに差し色のサルファースプリンググリーンを巧みに使い、ミッドソール部にはカーボンをビジブルに施すことでデザイン的なアクセントにも。全体を通して非常に完成度の高い一足に仕上がっている。

SUMMIT VECTIV SKY 2
¥29,700

ベクティブ3.0のコレクションは今季3モデル登場するのだが、その中で最も軽量性を追求したモデルがこちらのサミット ベクティブ スカイ 2。独自開発のEVAフォームをミッドソールを採用することで高反発・高クッションを提供し、反発性を発揮するカーボンプレートを全面に搭載。アウトソールのラグデザインも改良することで、グリップ性と操作性も高まった、その名の通りスカイランニングを中心に活躍するアスリートから支持されているモデル。シリーズのキーカラーであるイエローのアッパーも印象的で、トレイルランニングのシーンから日常まで、足元を華やかに演出してくれる。

VECTIV ENDURIS 4
¥24,200

3モデルの中でもっとも汎用性に優れているモデルがこちらのベクティブ エンデュリス 4。ミッドソールを前作より4ミリ厚くすることでクッション性が向上し、高さが5ミリ増した4ミリのラグ設計でグリップ力もアップ。トレイルからロードなどのランニングシーンはもちろん、タウンユースまでマルチに活躍してくれる一足となっている。また、このベクティブ エンデュリス 4のみカラーバリエーションが用意され、メンズではブルーやブラックを使用した全3色がラインナップ。お好みでセレクトしたいところだ。

INFORMATION
ゴールドウイン カスタマーセンター
0120-307-560 
www.goldwin.co.jp/tnf/

 

Runners Pulse Magazine Vol.11
Special mini book
THE NORTH FACE “VECTIV 3.0”

ランナーズパルス最新号の
特別付録ミニブックでザ・ノース・フェイスを特集

創刊12年目を迎えた本誌兄弟誌、ランナーズパルス最新号の特別付録で「ザ・ノース・フェイスの最新トレイルシューズ「VECTIV 3.0」を徹底解剖!」と題して、総力取材を行っている。現在、全国書店にて絶賛発売中。

SUMMIT VECTIV PRO 3
2021年1月にデビューしたザ・ノース・フェイスの「VECTIV」。 トレイルシューズとして初めてカーボンプレートを搭載したこと で話題を呼んだが、個人的にはその最初のコレクションのひとつ「フライト ベクティブ」のクセの強さが印象に残る。反発力や推進力は抜群に高いものの、やや度が過ぎる感は否めず、安定感に欠け、自分の走力では手綱を握れない「じゃじゃ馬」というのが率直な感想だった 。それから4年が経ち、「VECTIV」は「VECTIV 3.0」へとアップデート。今回はその主力モデル「サ ミット ベクティブ プロ 3 」をテストした。結論からいうと、劇的に履きこなしやすくなった!極厚のソールはクッション性と反発性のバランスが素晴らしく、走り心地は軽快。次の一歩を踏み出すときに気持ちよく跳ねるものの、安定感は高く、着地時にグラつくことはない。初代で拭えなかった「じゃじゃ馬感」は影を潜めたといっていい。テクノロジーの面では、新構造のソールユニッ トは2枚の3Dプレートを内蔵した5層構造に。厚みを増しながら高い 安定性を実現した背景に、このソールユニットがあることは間違いない。また、強く感じたのは、シューズの力に頼った省エネな走りができること。長距離を走るときの頼もしい相 棒になってくれると思う。なお、「VECTIV 3.0」はこのモデルを含めて3つのモデルがラインナップ。 持ち味はモデルごとに異なるので、好みやシーンに応じて選びたい。
ランナーズパルス副編集長 榎本一生

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