Photo : Daiki Suzuki
Text : Masahiro Minai (Runners Pulse)
Edit : Shin Kawase

SPECIAL BRAND FEATURE, ECCO PART 1
デンマーク、オランダ、ポルトガル。
ヨーロッパ3ヵ国を訪れて分かった
エコーの躍進の秘密を完全レポート。

快適な履き心地とスタイリッシュなデザインを高次元で融合することにより、ワールドワイドで躍進を続けるエコー。デンマーク発祥のシューズブランドだが、現在はオランダ、ポルトガルを始めとしたヨーロッパ各地にレザーファクトリーや製造拠点などを設けている。今回、本誌兄弟誌ランナーズパルスの南井正弘編集長が、これら施設を実際に訪れ、エコーというブランドが急成長した理由を探った。

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ECCO DESIGN CENTER
AT ECCO HEADQUARTERS,
DENMARK

最初に訪問したのはデンマーク南部、ハンブルク空港から2時間ほどのドライブで到着するドイツ国境に近い小都市、トゥナーにある開発部門エコー・デザイン センター。

田園風景が広がる中、突如現れる巨大な足のモニュメント。それがエントランスの目印だ。筆者はこれまで様々なスポーツブランドやシューズブランドのヘッドクォーターを訪れており、そこでは才能あふれるクリエイターたちが日々アイデアやコンセプトを生み出していたが、エコー・デザイン センターにおいても、コンセプトラボ、デザインラボ、ゴルフラボといった機能を有しており、優秀なスタッフが日々新たなプロダクトコンセプトやデザインをクリエイトしていた。

SPECIAL INTERVIEW WITH
ECCO KEY PERSON 1/2

以前からエコーというブランドに注目してきた人なら気付いていると思うが、ここ1~2年ほどでエコーがリリースするプロダクトのデザインが以前よりスタイリッシュになっている。今回、その原動力となったキーマン2人に話を聞くことができた。

LIAM MAHER / リアム・マーハー
エコー グローバル クリエイティブ ディレクター

リアム・マーハーはエコーに入社する前はアムステルダムを拠点に、細部にまでこだわったディテールを採用することで、デニムに新たな魅力を吹き込み、ワールドワイドで高い評価を得ることに成功したデニムブランドのデンハムで、デザイン&ブランドディレクターとして活躍。またスノーボードのリーディングブランドであるバートンに籍を置いたこともあるように、エッジの効いたファッションやスポーツにも精通している。そんな彼がエコーにジョインしたことによって、目に見えてプロダクトやマーケティング戦略がスタイリッシュになってきた。「エコーというブランドはいくつもの誇ることのできる点がありますが、まず挙げられるのは、フルイドフォルムと呼ばれる独自のダイレクトインジェクション製法を採用している点ですね。この製靴方法により、前足部の屈曲性を始めとして従来のシューズよりも歩行性能が向上し、さらに解剖学に基づいたアナトミカルラストという、底面に丸みを持たせたラスト(木型)を使用することで、エコーのシューズは長時間履いても快適性を失うことはありません。製品開発のアプローチの手法については、エコーというブランドは常に進化することを意識しています。シューズの世界にはデザートブーツを始めとして、誰もが知っているプロダクトがあると思いますが、エコーはこういったデザインをリスペクトしつつ、前述のフルイドフォルムやアナトミカルラストを使用することでオリジナルとなったプロダクトよりも遥かに履き心地の優れた一足となっています。アッパーに使用しているレザーも上質です。既存のデザインやスペックを真似るのは単なるコピーですが、私たちは完成度の高いシューズデザインをオマージュしつつ、機能性をオリジナルよりも大きく向上させているのです」とコメント。これまでの彼の経歴で培われたセンスとエコーの技術開発力が融合することで、今まで以上に魅力的なコレクションが誕生しそうな気がした。

SPECIAL INTERVIEW WITH
ECCO KEY PERSON 2/2

NIKI TOESTESEN / ニキ・テステンセン
エコー デザイン ディレクター

ニキ・テステンセンはエコーのデザインを統括するデザインディレクター。五世代に渡って靴づくりに携わってきた家系の出身であり、履き心地には定評のあったエコーのシューズにスタイリッシュなデザインを融合させ、幅広いユーザーを獲得することに貢献したキーパーソンだ。エキソストライクやクールといった最近の注目作も彼が担当している。「これまではメンズとウイメンズでデザインチームが分かれていましたが、現在は性別ではなく、プロジェクト毎に担当するようになりました。そのほうが、プロダクトコンセプトやデザインテイストなどの統一性がとれますからね。シューズ業界では、一般的にスタイルとコンフォートを両立させることは難しいと言われていますが、現在のエコーでは、この二つの要素を高いレベルでミックスさせることはマストになっています。例えばVITRUS ARTISANというドレスシューズではフルイドフォルムと呼ばれるエコー独自のダイレクトインジェクション製法による軽量で屈曲性のあるポリウレタンソールにレザーカバーヒールを合わせたアウトソールを採用することで、パッと見は伝統的なレザーシューズなのに、履き心地はスニーカーのようで、軽快なフットワークを提供してくれます。見た目からは想像できないくらい本当に快適なんですよ。『これまでの作品で最も好きなのは?』とよく聞かれますが、どのシューズも自分の子供のような存在だから1足を選ぶことはできないですよ。それぞれのシューズに思い入れがありますからね」と語る彼は、根っからのシューズ好きであり、今後も魅力的なプロダクトをクリエイトしていくことは間違いないだろう。

About ECCOM
靴職人で、コペンハーゲンの靴工場長だったカール・ツースビーにより、1963年に創業されたエコー。創業の地を公募した彼を受け入れたのは、デンマーク南部の小さな街ブレデブロであった。それまでのシューズが、「足を靴にあわせる前提で作られていた」のに対し、彼は「靴は足にあわせて作られるべきである」という、当時としては革新的な考えで履き心地を重視したシューズを製造。1970年代に入ると、彼のポリシーのもとで開発された機能的かつ快適性に優れた同社のシューズは、瞬く間にヒット。シューズ業界において確固たるポジションを築くことに成功する。創業当時、たった16人の従業員でスタートしたエコーは、現在約20, 000人の従業員と世界約90カ国でビジネスを展開するグローバル企業に成長。現在もカール・ツースビーが重要視したコンフォート、すなわち快適な履き心地を確保したシューズを作り続けるとともに、最近では快適性とスタイリッシュなデザインを高次元で融合した靴を製造するブランドとして高い評価を得ている。

 

UPSTAIRS
THE HISTORICAL MUSEUM OF ECCO,
DENMARK

~創業の地・ブレデブロにある
エコーのアーカイブミュージアムを訪問~

デンマーク南部の街ブレデブロはエコー創業の地。エコー・デザインセンターのあるトゥナーからは車で30分ほどの距離で、こちらには現在本社機能や営業部門が存在する。そして同所で忘れられないのが過去のアーカイブが展示されたミュージアムであるUPSTAIRS。エコーの歴代の代表作がディスプレイされている。

エコーが創業されたブレデブロにあるUPSTAIRSは、1963年にスタートしたエコーの歴史すべてを網羅したミュージアム。これまでにリリースされた主要プロダクト、トピックスすべてが集められており、ここに来ればエコーというブランドの素晴らしさが理解できるだろう。この施設が興味深いのは、関係者以外に一般の人も予約をすれば内部を観覧できる点。革新的な製靴技術により、シューズ業界に大きな影響を与えたブランドだけに、ここを訪れることでエコーというブランドの偉大さを感じることができるだろう。

時系列で何が起きたかわ かるレザー張りの壁。カー ル・ツースビー夫妻からエ コーはスタートする。

北欧の伝統的な木靴であるクロッグをモチーフにしたCLOGSを開発しヒット。

カラフルなアッパーの印象のあるSOFTだが、こんな感じの落ち着いたカラーリングも。ダイレクトインジェクション製法はここから誕生した。

そのSOFTの原型であったモデル。

ランニングカテゴリーに参入し、大きなインパクトを与えたBIOM。ランニング・生体力学のリーダー、ケルンスポーツ大学による研究開発と、世界トップクラスのトライアスロン選手トービヨン・シンバルのアイデアから誕生。

1978年に登場し、愛嬌あるデザインでヒットしたJOKEの広告。これもエコー躍進の原動力となったモデルだ。

箱に詰めるまでの最終工程をビデオで放映。1足1足丁寧にパッキングされる様子を見ることができる。

About UPSTAIRS
UPSTAIRSはエコーの歴史を一か所に結集したヒストリーミュージアム。1963年の創業以来の様々なトピックスやヒットモデル、シューズ業界に大きなインパクトを与えた革新的なプロダクトといったエコーのすべてがディスプレイされている。さらにエコーというブランドの代名詞であるダイレクトインジェクション製法をわかりやすく説明したコーナーもあるなど、シューズ業界を志す学生が訪れても勉強になる施設である。

 

ECCO LEATHER
THE HIGHQUALITY LEATHER SUPPLIER,
THE NETHERLANDS

~エコーはレザー工場を保有する稀有なブランド
そのアドバンテージを最大限に活かした工場に潜入~

エコーはシューズブランドであると同時にレザーブランドでもある。これは意外と知られていない事実であり、自社のシューズのために供給するだけでなく、誰もが知っているメゾンブランドも同社の高級天然皮革を採用しているのである。今回オランダはアムステルダム郊外にあるエコー・レザーを訪れ、世界屈指の品質を誇る同社の製造工程を見学した。

広大な敷地にビームハウスと呼ばれる製革における鞣し前の
準備工程(水漬け、石灰漬け、脱毛、脱灰、ベーチングなど)や、鞣し、乾燥施設が配される。

自社でレザー工場を有する利点のひとつは、良質な皮革を他社よりもコストを抑えて手配できることである。

オフィスには膨大な種類のスウォッチ(見本)が収納されており、クライアントからのあらゆる要望にも応えることができる。

SPECIAL INTERVIEW WITH
ECCO KEY PERSON

エコー・レザーは自社への天然皮革の供給だけでなく、現在ではアップルを始めとした著名企業にレザーを納入している世界屈指のレザーサプライヤーだ。そんな同社において、数々のレザー開発に尽力してきたキーパーソン、マキス・サッペルグロウに話を聞いた。

MAKIS SACHPEROGLOU / マキス・サッペルグロウ
エコー・レザー イノベーション スペシャリスト

エコー・レザーのキーパーソンとして各クライアントと新たなレザーをクリエイトするマキス・サッペルグロウ。「新たなレザーをクリエイトする際には、世の中のありとあらゆるものからインスピレーションを受けます。例えば自然界とか、ファッション雑誌だとか。クライアントと議論を何度も重ねて、思った通りのレザーが完成したときは本当に嬉しいですね。困難であればあるほど、出来上がったときの喜びは大きいのです。最近大きな話題となっている透明レザーのアパリシオンは、古代エジプトのパピルスからインスピレーションを受けましたが、透明な状態で柔軟さを保つことは本当に難しく、25年間エコーで働いてきましたが、これが自分にとっての最も大きなチャレンジであり、アパリシオンを完成させたことが一番嬉しかったですね。今後もクライアントから突拍子もないアイデアを提案されることもあるでしょうが、それをカタチにすることは本当に楽しいです」と語ってくれた。彼のようなクリエイターがエコー・レザーにいる限り、これからも世間をアッと言わせるようなレザーが発表されることだろう。

About ECCO LEATHER
アムステルダムから100kmほどの郊外にあるドンヘンに研究開発所と工場を設けるエコー・レザー社。現在エコー・レザーの拠点はインドネシア、タイ、中国にも拡大しているが、オランダのドンヘンが、開発を始めとしたあらゆる意味で中核を成す。エコーのプレミアムレザーは自社製品に使われるだけでなく、世界中の著名なブランドにも採用されており、クライアントからの様々な要望に応えることで、その開発力を日々向上。最近では透明レザーのアパリシオン、熱に反応して色が変わるクロマタファーといった特殊レザーも発表し、世界中のブランドから注目を集める存在となっている。現在では外部へのレザーの販売が全体の約半分となっている。

Part2へ続く

INFORMATION
ECCO Japan 
0120-974-010
https://jp.ecco.com

ECCO LEATHER
https://eccoleather.com

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