Photo: Soma Doi(CLOCK)
Edit &Text : Shin Kawase

ASICS SportStyle's vision for the future
~アシックス スポーツスタイルは、
これからどこへ向かうのか~

現在のスニーカーマーケットは、メジャーブランドの一極集中ではなくなり、デザイン性はもちろん、機能面、利便性、価格など、嗜好が多様化、細分化している。消費者がスニーカーに求めるハードルが上昇している今、提供する側は、その高く厳しいハードルを超えるべく、あらゆるニーズに応えねばならない大変な時代だ。その激戦の中、アシックス スポーツスタイルの快進撃が続いている。アシックス スポーツスタイルは、これからどこへ向かうのか?我々編集部はアシックスの本社がある兵庫県・神戸へ向かった。

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アシックス本社は取材時、神戸市南部の人工島、ポートアイランドから神戸市内中心部の三宮に移転する引っ越しの真っ最中。神戸市内の4つのビルに仮移転中だった。取材場所は、中埠頭駅前にある旧本社となった。

本社移転の理由は、移転をきっかけに人材や情報をさらに得やすくし、新たなイノベーションを創出するなど、成長をさらに加速させたいためだそうだ。旧本社跡地の今後の活用方法はこれから検討される。数多の名作を生み出してきた旧本社を見つめていると我々も感慨深いものがある。心機一転、新たな門出を前にアシックスの次世代を担うキーマン、デザイナーの竹井 惇氏を取材した。

竹井 惇 / 株式会社アシックス スポーツスタイル統括部 デザイン部
1985年、兵庫県西宮生まれ。小学1年からアシックスを履いてラグビーを始め、高校では全国大会を目指し日々汗を流す。大学でプロダクトデザインを専攻しながら、サークルでラグビーを続け、ラグビーシューズの作り手側に回ることを夢見て、卒業後にアシックスに入社。配属されたフィールド開発チームでは、陸上、サッカー、野球、ラグビーなどのコアスポーツに携わり、5年目にしてラグビーシューズを手掛ける夢をかなえる。その後、アクティブランニングチームに異動し、2019年に始動したアシックス スポーツスタイルの初期メンバーとなり、現在はスポーツスタイルの新たな歴史を作るべく日々奮闘している。

About ASICS SportStyles
Jun Takei(ASICS SportStyles Designer)
Interview

今のアシックス スポーツスタイルについて

–––ここ数年、アシックス スポーツスタイルの人気が急上昇しています。率直にこの現状を捉えていますか?
アシックス スポーツスタイルがアシックスブランドのカテゴリーとしてスタートしたのが2019年。立ち上げから数年が経ち、現在は基盤が整って、スニーカー市場におけるポジションがようやく定着してきた段階だととらえています。もちろん、決して今がゴールとはとらえていませんが、多くのお客様に受け入れられるとは想像していなかったので、今の状況は結果として大変嬉しく思っています。ただ、快適性を追求したテクノロジーには絶対的な自信がありました。その精度を高めていけば、多くの方に気に入っていただけるはずだと確信していました。あとは、いかにそれを伝えていくか。市場の動向をしっかり注視しながらマーケティングして、リリースするプロダクトを整備していった感じです。

–––アシックス スポーツスタイルにとって日本のポジション、世界の中でどういう役割なのでしょうか?
日本のクリエイターとのコラボレーションをはじめ、日本独自のカルチャーは今でも、世界に大きなインパクトを与えています。その背景には、日本発のストーリーがあると考えており、これは非常に重要な要素であり、役割だと思っています。それを伝えるためにも 我々が日本のクリエイターとの共作や日本のカルチャーを世界に発信することは大きな意義があると感じています。

–––日本のみならず、海外での人気もすごいですね
ヨーロッパではフランスが特に人気が高く、そして北米、アジアでは韓国と中国ですね。大きなマーケット、新たなトレンド発信国や成長率の高い地域で支持を頂いています。

–––世界で人気の高いモデルを教えてください
日本だけでなく、グローバルでゲルカヤノ 14やゲルエヌワイシーといったアーカイブをベースにしたランニングシルエットの人気があります。そして、ゲルクォンタム キネティックのようにGELテクノロジーを最大化させたモデルも最近では支持して頂いています。また、1990年代のハンドボールシューズ、スカイハンド OGもまた支持を集め、人気を博しています。地域によってタイミングの違いはあるものの、グローバルで見ても人気のモデルは世界で共通していると感じています。

各モデルの役割について

–––インラインモデルとコラボレーションモデルの役割の違いを教えてください
インラインモデルは、我々のすべての軸となる存在です。ブランドを最も理解している自分たちだからこそ、世界各国のアシックススタッフと共に日々リサーチを重ね、マーケットやお客様のニーズをとらえながら毎シーズン提案を行っています。その積み重ねが、アシックスというブランドを形作る結果につながっていくと考えています。一方、コラボレーションは、新しいコンシューマーとのタッチポイントを生み出す役割を持っています。さらに、パートナーが持つ世界観がインラインモデルにも影響を与え、アシックスのクリエイションをリードしてくれる存在でもあります。例えば、隈 研吾さんとのコラボレーションはその代表例です。我々だけでは接点を持つことが難しい建築の知見を取り入れたものづくりが実現し、貴重な財産になっています。

–––キコ・コスタディノフの役割を教えてください
ファッションの視点を取り入れるために、2018年に彼らとのコラボレーションをスタートさせました。しかし、それは単に知名度を上げることが目的ではなく、彼らのクリエイションがアシックスのものづくりに大きな影響を与えると考えたからです。彼らのアシックスへの理解や愛情は想像以上で、私たち以上にアーカイブに精通しているほどです。コラボレーションの際は、来日して神戸本社のアーカイブルームに丸々2日間こもって徹底的に研究するほどの熱量を持っています。以前は、アーカイブを参照しながらも、アッパーとソールを組み替えるシンプルな開発が中心でした。しかし、彼の提案する自由なデザイン要素のミックスと再構築のアイデアは、非常に新鮮で斬新でした。自社の強みやアイコニックな要素を組み合わせることで、これまでにない新しいプロダクトを生み出せるという発想をもたらしてくれたんです。それと同時に、アシックスには強力なアーカイブが複数存在することを改めて認識させられました。2023年からはシューズだけでなく、アシックス ノバリスにも携わり、アパレルとシューズをトータルで手がけています。彼のフィルターを通すことで、ファッションの最前線に初めて触れられたような感覚がありましたし、これまでになかったアシックスの新たな解釈が生まれました。今では、我々のイノベイティブなクリエイションをリードする重要なパートナーとなっています。

–––ゲルカヤノ 14の役割を教えてください
ライフスタイルカテゴリーであっても、アシックスはあくまでスポーツブランド。その前提は変わりません。各モデルには、これまで培ってきた知見や技術、そして歴史を背景にしたストーリーを持たせることが重要です。ゲルカヤノ 14は、まさにそうしたアシックスのDNAを受け継ぐモデルです。例えば、足とシューズの一体感を高めるバイオモルフィックフィット構造など、アシックスを代表する機能が標準装備されるようになったのは、ゲルカヤノ 14の開発がきっかけでした。ファッション的な視点だけでなく、テクノロジーとのバランスも絶妙に融合しており、アシックス スポーツスタイルを象徴する一足となっています。

–––定番モデルのゲルエヌワイシー、ゲル2160、ゲルクォンタムシリーズの役割も教えてください
ライフスタイルシューズをアーカイブから商品化する際、鍵となるのは時代の流れにマッチするストーリーをどう設定するかです。アーカイブモデルには、それぞれの歴史や創出してきたカルチャーが豊富にありますが、お客様の嗜好は多様で、ひとつのアプローチだけでは対応できません。そのため、複数の切り口が必要になります。ゲルカヤノ 14、ゲルエヌワイシー、ゲル2160は、そうしたアーカイブの強みを活かしながら、最適な形で市場に送り出されています。一方で、ゲルクォンタムシリーズは他とは異なり、アーカイブではなく現代的なテクノロジーを軸にした設計思想を持っていて、パフォーマンスと、ファッションを含むライフスタイルの2つの方向性で開発が進められています。ゲルクォンタムシリーズは、同じシリーズ内でも例えばゲルクォンタム 360とゲルクォンタム キネティックで異なるコンシューマーをターゲットにしてる特殊な存在になります。

アシックス スポーツスタイルのブランド理念

–––あらためてアシックス スポーツスタイルのブランドコンセプト、ブランド理念を教えてください
スポーツで培ったテクノロジーを活かし、コンシューマーのライフスタイルをアクティブなものにすることを理念としています。

–––アシックス スポーツスタイルを購入する方が、最も求めるものは何だと思いますか?
アシックスならではのスポーツの解釈や、アーカイブからインスパイアされたデザインと機能によって、履く人の日常がより快適になり、心と体をアップリフトさせること。それが私たちの目指すところであり、購入される皆さんもそこに期待しているのだと思います。

–––竹井さんが考える他ブランドにはない「魅力」とは何でしょうか?
機能とデザインを分けることなく開発していることでしょうか。見た目だけで考えず、機能性が優先の設計です。それが独自性を生み、シューズにも表現されていると思います。

–––他ブランドにはない唯一無二の「テクノロジー」とは何でしょうか?
デザインと開発をスポーツ工学研究所と協業しながら進め、人間の体の動きに沿った機能部材を生み出していること。そして、それらを適材適所に配置し、快適な履き心地を実現することが、他にはないアシックス独自のテクノロジーです。

–––竹井さんがデザインする上で一番大切にしていることは何ですか?
デザインのためのデザイン、意味がない装飾的なデザインは絶対にやらないことです。あくまでも機能性重視で、デザイン画を描く際には、意味がある線しか引きません。

未来のアシックス スポーツスタイルについて

–––Y2Kスタイルの流行がしばらく続いていますが、次はどんなトレンドが来ると予測していますか?
Y2Kはもはやトレンドではなく、普遍的なひとつのカテゴリーとも言える存在になりました。今起こっていることはロープロファイルというワードが飛び交うように、レトロ回帰や、フューチャリスティックなスタイルなど、複数の流れが新たに生まれてきていると考えています。

–––次の一手となるネクストヒーロープロダクトについて教えてください
Y2Kと呼ばれる普遍的なスタイルの進化版と、アップカミングなスタイルとしてヴィズテック、ヴィンテージテック のモデルですね。具体的にはゲルニンバス10.1やゲルキネティックシリーズが挙げられます。

–––今シーズンのヴィズテック、ゲルキネティックフルーエントについて教えてください
「アシックスの最新テクノロジーを搭載した最高のコンフォートプロダクトを届けたい」という想いから、この企画がスタートしました。スタイリングは、2000年代のレジェンドコンフォートモデルにインスパイアされてデザインしています。ソールには、かかと部分にライフスタイルのさまざまな動きに適応するSCUTOID GELを搭載し、フォア部分には反発性に優れたBLASTを配置しました。弾むような蹴り出しが特徴で、そのアクティブさがマインドまで前向きにさせる一足になっています。

VIS TECH
GEL-KINETIC FLUENT

¥22,000

–––もうひとつのヴィンテージテックのモデル、ゲルディーエス トレーナー 14について教えてください
これまで過去のアーカイブからヴィンテージテックとして、ゲルカヤノ 14、ジーティー2160、ゲル1130を商品化してきました。その流れを汲み、今回はゲルディーエス トレーナー 14を採用しました。アシックスらしい流線的かつ機能的なデザインに加え、非対称のディテールが特徴的なモデルです。オリジナルはスリークなシルエットでしたが、復刻にあたり、履き心地の快適さをより重視するため、試作を重ねた結果、ライフスタイルシューズのラスト仕様に変更しました。また、街中で気軽に履けるよう、ソールをラバーに変更するなど、当時のイメージを残しながら現代的なアレンジを随所に加えています。当時を知る人には懐かしく、20代には新鮮に映る一足ではないでしょうか。

VINTAGE TECH
GEL-DS TRAINER 14

¥15,400

リコメンドモデル

–––アシックス スポーツスタイルをどんな方に履いて欲しいですか?(まだ未体験の方に)
基本、全てのお客様です(笑)。アクティブに日常を過ごしたいと思っているお客様に履いていただければ嬉しいですね。

–––アシックス スポーツスタイルをはじめて履くという方にお勧めのモデルは?
シチュエーションや目的など、お客様の環境とニーズが様々なので、選ぶのが難しいですが、例えばランニングシルエットのシューズだったらゲル1130やゲルエヌワイシーでしょうか。ゲルエヌワイシーはファッション関係者の間でも話題になったモデルでお勧めです。

取材協力:株式会社アシックス

ASICS SportStyle
2025 Spring / Summer
VIS TECH& VINTAGE TECH
Best Selection
by SHOES MASTER

アシックス スポーツスタイルは、近年のスニーカーシーンを牽引している存在となり、日本だけでなく、欧米でも高く評価され、その勢いはますばかり。そこでアップカミングなスタイルとして登場したヴィズテック、ヴィンテージテック。2025年春夏コレクションの中から、編集部が厳選したリコメンドモデルを紹介する。
Product Text: Fumihito Kouzu

VIS TECH
GEL-KINETIC FLUENT
  
White / Truffle Grey
¥22,000

ゲルキネティックフルーエントは、アーカイブのランニングシューズからインスピレーションを得て、伝統的なスタイルを現代のテクノロジーを用いて再構築したシューズ。2010年代に登場したさまざまなランニングシューズの意匠を組み合わせることによって、存在感のあるシューズに仕上げられている。ミッドソールはエフエフブラストプラスエコ(FF BLAST PLUS ECO)とスクートイドGEL(Scutoid GEL)テクノロジーで構成。クッション性と反発性に優れており、快適な着用感を実現している。スクートイドGELテクノロジーはデザインのアクセントとしても非常に印象的。

VIS TECH
GEL-KINETIC FLUENT
  
Glacier Grey / SteelGrey
¥22,000

VIS TECH
GEL-QUANTUM KINETIC
  
White / Khaki
¥33,000

前足部と踵部の両方に彫刻のようなルックスが印象的なスクートイドGELテクノロジーを採用したゲルクォンタム キネティック。そのアバンギャルドなデザインは、ゲルニンバス、ゲルクッション、ゲルキネティック、ゲルキンセイシリーズなど、アシックスを代表するランニングシューズからヒントを得たもの。アッパーはメッシュ素材の本体に人工皮革の補強をレイヤードし、快適性を高めている。

VINTAGE TECH
GEL-DS TRAINER 14
  
Truffle Grey / Pure Silver
¥15,400

初代モデルが1995年に登場したゲルディーエス トレーナーシリーズ。そのシリーズ14代目として、2009年にリリースされたゲルディーエス トレーナー 14が待望の復刻。2000年代後半のランニングシューズらしい、アッパーのダイナミックなメッシュ使いと、メタリックなアシックスストライプが印象的。踵部にはクッション性を高めるGELテクノロジーが、中足部には安定性を高めるトラスティックユニットが搭載されており、快適な履き心地を提供する。

VINTAGE TECH
UB10-S GEL-KAYANO 20
  
Moss / Gunmetal
¥22,000

2013年に登場したゲルカヤノ 20は、長距離を走るランナーを支えるための優れたクッション性と安定性が高く評価されたシューズだ。テクニカルかつモダンな印象の美しいデザインは、建築物や車のデザインからもインスピレーションを得たもの。アッパーには優れたフィット感をもたらすフルイドフィットを採用。網状に張り巡らされたTPU素材がサポート性を高めている。アッパー同様、建築物のような美しさを持つソールユニットには、GELテクノロジーが搭載されている。5月発売予定。

INFORMATION
アシックスジャパンカスタマーサポート部 
0120-068-806
www.asics.com/jp/ja-jp/mk/sportstyle

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