Shigeyuki Kunii (mita sneakers)& Takeshi Saito(Mizuno Sports Style) Interview
via
SHOES MASTER
Web SPECIAL
Photo: Masataka Nakada(STUH)
本誌秋冬号とウェブスペシャルで掲載した
国井栄之氏と齊藤健史氏
ミズノのキーマン2人のインタビューを
NEWSでも紹介。
Shigeyuki Kunii (mita sneakers)&
Takeshi Saito(Mizuno Sports Style)
国井栄之 / ミタスニーカーズ クリエイティブディレクター
1996年、ミタスニーカーズに入社。プレスを経てマーチャンダイザーとして仕事の幅を広げながら、入社2年目に会社にも内緒の直談判により当時は未知であったコラボレーションを実現。現在は、クリエイティブディレクターに就任し同店を率いる立場であり、スポーツ・アウトドア・ファッション・ラグジュアリーに至るまで、様々なジャンルのブランドとのコラボレーションや、インラインのディレクションを数多く手掛けている。
齊藤健史 / ミズノ株式会社 グローバルフットウエアプロダクト本部
企画・開発・デザイン部ライフスタイル企画課所属兼デザイン課所属
大学卒業後に一般企業に入社。その後、その企業を退社してシューズの専門学校で2年間靴作りを学んだ後、外資系スポーツブランドに入社し10年在籍。その経験を生かして、2017年にミズノに入社。ランニングシューズを担当しながら、ミズノのニューレーベル“rhrn”(アールエイチアールエヌ)を立ち上げる。現在は、KAZOKU、rhrn、ミズノスポーツスタイルのインラインとすべてのコラボレーションモデルを手掛けている。
–––今の関係、お互いの役割を教えてください
国井 基本的には齊藤くんが考えるビジョンを共有してもらった上で、そこに対して個人的に思うことをフィードバックしてる感じなんです。その時のフェーズによるんですけど、サンプルが上がっていてフィードバックを求められるときもあるし、逆に頭の中だけのプランを聞かせてもらって、そこに対してディスカッションをするときもある。あとは、普通の単なる雑談も山ほどしてる。雑談の中から生まれるアイデアもあるので。齊藤くんと会うときは、基本フラットですね。
齊藤 国井さんは、僕の問い掛けに対して、150から200パーセント、時には300パーセントくらいにして返してくださるんです。それはやっぱり長年スニーカービジネスを見てこられた方なので、こういうものを狙ったほうがいい、こういう方向にいったほうがいいということをすごく端的にかつクリアに教えていただけるんです。考えさせられることが本当に多くて、国井さんってすごいなって毎回お話しするたびに思っています。だから僕は毎回ミーティングが終わると、考え過ぎて脳が疲れてへとへとになるんです(苦笑)。
ウエーブ ムジン ティーエルは分かりやすく言うと、
ミズノの温故知新モデルみたいな感じ
齊藤健史
–––2022年秋冬のメーンモデルについて教えてください
齊藤 メーンのひとつは、ウエーブ ムジン ティーエルのゴアテックスバージョンです。ウエーブ ムジン ティーエルは分かりやすく言うと、ミズノの温故知新モデルみたいな感じで、世界的に著名なシューズデザイナー、トゥアン・リー氏が過去に描いたデザイン画を基に、現代的なテクノロジーとして新しく設計されたパフォーマンストレイルランニングのソールを合わせたスポーツスタイルならではの一足になります。
Design drawing by Tuan Le (2007)
ミズノの歴史的傑作、ウエーブライダー1を
デザインした世界的なフリーランスの
シューズデザイナー、トゥアン・リー氏。
齋藤氏はポートランドにある自宅を
2019年夏に訪ね、膨大なデザイン画から
上記の一枚を採用した。
齊藤 先シーズンにゴアテックスバージョンのブラックをリリースさせていただきましたが、今回は秋冬に特化したカラーリングかつ、もうちょっとマルチでカジュアルに履けるモデルになっています。アッパーのレイヤーもブラックの場合はワントーンでシームレスみたいな感じでしたが、今回もランバードロゴが全面に出るのではなく、全体のデザインの中でランバードが溶け込んでいる感じに仕上げています。
齊藤 もうひとつのネイビーは、ミズノのヨーロッパチームからのリクエストで海外の方から見た日本、ミズノを表現したフィッシャーマンになります。イメージは、京都・伊根の代名詞である舟屋。港の海の真上に家が建ち、その家から船が出て漁に出るみたいな風景。それがヨーロッパチームの思い描く日本の原風景だそうで、それがすごく新鮮でクールだと彼らが言っていたところから着想を得ています。MIZUNOも漢字にすると「美津濃」で水由来が多いので、伊根の漁師をテーマして、ネイビーは海、サイドのランバードロゴの上は漁師網のイメージとなっています。
国井 ウエーブ ムジン ティーエルは、過去と現在を上手く組み合わせて、シーズンごとのただの色替え、素材替えだけじゃなく、レイヤーから何から全部変えていてフレッシュさをキープ出来ている稀有なモデルだと思います。本当に毎シーズン違うモデルと思うように、ガラリと変わって出てくる。世代によって着目するポイントが違うので、幅広い世代に選ぶ理由ができるという。
国井 1モデルでここまでバリエーション見せていくって本当難しいと思うんですよ。それが今のミズノには上手くできてて。あと、言葉にはしづらいんですけど、何となく感覚的に時代に合っているっていうのもある。時代に合っているから好セールスにつながる。そのテクノロジーだけじゃないセンス的なものが齊藤くんにはあって、ミズノの技術力が上手く合わさっているという。それがミズノ全体として好調をキープしている要因だと思います。
ウエーブプロフェシーは、
ミズノのアイデンティティが詰まった
唯一無二の存在
国井栄之
–––もうひとつがウエーブプロフェシー ベータですね
齊藤 はい。ウエーブプロフェシー ベータは、国井さんもおっしゃってくださったミズノの最大の強みである、ランニング競技者用の専門用具であるパフォーマンスモデルのウエーブプロフェシー 10をスポーツスタイルにアレンジしたモデルになります。ベースモデルは、アーティスト・空山 基さんとのウエーブプロフェシー ソラヤマ。
齊藤 アッパーにモノソック構造を採用したインラインモデルの新色です。ミズノが今またヨーロッパでも盛り上がってきているので、海外の方から見たミズノらしさ、ないしは日本の面白さをプロダクトで表現しているつもりです。靴を買い替えなきゃいけなくなる一番の要因は、ミッドソールのEVA(スポンジ)やウレタンフォームがへたり込み劣化すること。
齊藤 ミズノが独自に開発したウエーブプロフェシーのソールは、空洞のあるインフィニティ(∞)構造のプラスチックプレートを採用することで、へたる原因が極力小さくなっているんです。またミズノ・ウエーブを進化させたインフィニティ・ウエーブを搭載したソールは安定感もあり独特のクッション感を実現しています。ウエーブプロフェシー 10は国井さんから「なんか理屈では言い表せない高揚感がこのモデルには詰まっている」と言っていただいた、究極の機能美を兼ね備えたミズノのアイコンプロダクトになります。
国井 ウエーブプロフェシーに関して僕が思うのは、ミズノは靴っていうよりは運動器具屋さんっていうイメージなんです。パラリンピック用に開発されたスポーツ用義足の板バネ(カタナシグマ)なんて本当にすごいじゃないですか。これまでなかった新たな発想の下で生まれたカーボン製板バネと斬新なデザインが衝撃的で。ミズノの技術力って革新的なものを追求する精神だと思うんです。それがミズノのアイデンティティ。そのアイデンティティが詰まったウエーブプロフェシーは、まさに機能美も含め唯一無二の存在ですよね。
MIZUNO×IMASEN “KATANAΣ”
by HAJIME SORAYAMA
–––あらためてミタスニーカーズにおけるミズノスポーツスタイルとは?
国井 売れるモデルに偏りがないめずらしいブランドなんですよね。これはすごい売れたけど、こっち残っちゃった、ていうのがほどんどのブランドであるのに。トータルのバランスいいブランドであり、安定している存在ですね。
–––野球で例えたら?
国井 もちろんスタメンなんですけど、内野手の9番バッターって感じですかね。絶対落とせない試合での戦略的で変則的な打順の組み方で。野球を知っている人ほど、9番って本当に重要なポジションじゃないですか。でも、今の現状である意味、二刀流はできちゃってるんですよね。ウエーブ ムジンのようなレトロなモデルも売れてるし、ウエーブプロフェシーのようなハイテクなものも売れてる。そしたらピッチャーで9番バッターの二刀流ですね。今後次第では、もしかしたらフルで4番を打つかもしれないし、競技変わったら、エースストライカーになるかもしれないし。でもそういうポテンシャルを秘めているブランドがミズノだと思いますね。
–––今後の展開を教えてください
国井 齊藤くんと共に進めさせて貰っているプロジェクトが来秋に向けて進行中です。その前の来春モデルもミズノの新たな可能性がまた広がった感じで手応えがあります。今後さらにミズノの新たなポテンシャルを感じられるプロダクトをローンチしていけるかと思うので期待していてください。
mita sneakers
https://www.mita-sneakers.co.jp/collections/mizuno
Mizuno
https://jpn.mizuno.com/