Photo : Soma Doi (STUH)
Interview & Edit & Text : Shin Kawase
Cooperation : PUMA Japan K.K.

The diversifying sneaker culture
now and in the future
~多様化するスニーカーカルチャーの今と「これから」~
Shigeyuki Kunii(mita sneakers)&
Katsufumi Tokunaga(soma)
Interview

日々進化を遂げながら、成熟市場となった現在のスニーカーマーケット。加熱するリセールマーケット(転売市場)をよそに、今、ヴィンテージスニーカーにも注目が集まっている。また、自分好みにアレンジするカスタムスニーカーや、ヴィンテージ加工を施すヴィンテージカスタムなども活況を呈している。これからの日本のスニーカーマーケット、スニーカーカルチャーはどう変わっていくのか?プーマ ジャパン協力のもと、2人のスニーカー賢者に話を聞いた。

このエントリーをはてなブックマークに追加

Shigeyuki Kunii (mita sneakers)
国井栄之 / ミタスニーカーズ クリエイティブディレクター

1976年、東京都生まれ。10代後半にカーレーサーを目指してレーシングチームに所属するが、道半ばでレーサーを断念。1996年、スニーカーと車の構造に共通項を見出し、当時では概念すらもなかったコラボレーションを具現化するため、スニーカー業界の門を叩き、「山男フットギア」の面接を受けるが不採用。その数日後、「ミタスニーカーズ」の面接で現在の社長である三田氏にその場で採用されるが、入社日をわざわざ延期して「エービーシー・マート」でアルバイトとして1週間だけ勤務し、スニーカー屋としてのノウハウを吸収。「ミタスニーカーズ」に入社後は、プレスを経てマーチャンダイザーとして仕事の幅を広げながら、入社2年目には会社にも内緒の直談判により当時は未知であり、現在ではポピュラーとなったコラボレーションを実現。その後、クリエイティブディレクターに就任し同店を率いる立場になりながらも、スポーツ・アウトドア・ファッション・ラグジュアリーに至るまで、様々なメーカーやブランドとのコラボレーションやインラインのディレクションを数多く手掛ける。2021年の現在も世界中のスニーカーフリークから注目を集め続けている。

Katsufumi Tokunaga (soma)
徳永勝文 / ソーマ オーナー

1977年、広島県三次市生まれ。バスケ部入部(小学3年生)を機に米国製コンバースCTを父親から一方的に買い与えられる。中学時代には仏製のアディダス スーパースターを履き、高校1年生で初めて自分の貯金でナイキ ジョーダン 1(青黒)を15万で購入。それからスニーカー愛が覚醒。広島大学進学後、バイト代すべてをスニーカーにつぎ込み、その数は500足超。大学卒業後、スノーボードを本格的にやりたくてカナダ・バンクーバーに渡ると、すぐに永住することを決意。ビザを取るためカナダの日本庭園の会社へ入社。1999年からスノーボーダーではなく庭師として活躍する。2003年、偶然観た雑誌『POPEYE』の「5坪から始める店特集」に感化され、出店を決意。すぐに帰国し、2003年8月に東京・下北沢にヴィンテージスニーカー専門店「ソーマ」をオープン。現在に至る。

About each other
お互いについて

–––まず、お2人の面識は?
国井 あります。アディダス オリジナルスのトークショーで一緒に登壇させて頂いたり、2014年からスタートしたコンバースのリミテッドライン、タイムライン(TimeLine)の企画で、徳永さんがディレクションしたスニーカーをミタスニーカーズで販売したこともあるし、徳永さんのお店(ソーマ)に伺ったこともあります。

–––そうだったんですね。お二人はお互いのお店をどう思っていますか?
徳永 今は国井さんとお付き合いがありますけど、メディアに出始めた頃からずっと見ていて、めちゃくちゃ有名な方で、雲の上の存在でした。ミタスニーカーズさんは、世界から注目されて、雑誌やテレビなどの露出も多くて…。すごいなっていうしかないですね。

–––具体的にすごいと思う所を教えてください
徳永 色々なブラントと沢山のコラボレーションモデルをリリースされているんですけど、ひとつひとつがしっかり企画されていて、質が半端なく高い。それが本当にすごいと思います。そしてそれを世界に向けて発信して、世界に認められていることですね。

–––お二人は世代も近いですよね
国井 たった今、知ったんですけど、同じ1976年世代で同学年だったんです。同世代で同じスニーカーの世界にいながら、まったく違ったアプローチをしているのが徳永さんですね。僕と同じような立場だったら出会えてないはずです。まったく違うから、いろんな場所でクロスオーバーしたりするし、色々な話もできる。僕も徳永さんをリスペクトしています。

–––ミタスニーカーズは新品の新作を売って、ソーマはヴィンテージを売る。まさに真逆ですもんね
国井 真逆っていうか、売る物の時代が逆行してますよね。でもお互いそれを認め合って、下北発信と上野発信だけど、同じ76世代という不思議な関係ですね。

About Vintage Sneakers
ヴィンテージスニーカーについて

–––日本のヴィンテージスニーカー市場の「今」を教えてください
徳永 今、すごく盛り上がっていると思います。おそらく世界でも一番盛り上がっているのが日本だと思います。昭和レトロブームというか「古い物が良し」とされてきている昨今では、ヴィンテージの車だったり、楽器、レコードなども人気がありますよね。洋服もそうですけどスニーカーも半世紀物(50年前の)が出てきているんです。要は生産性がない物ですね。

–––減りはしても、もう絶対増えないもの
徳永 はい。生産性がなく、もう増えないから、今では投資目的で買う人も出てきてるぐらいなんで。

–––そうなんですね。それでは世界のヴィンテージスニーカー市場は?
徳永 コレクターは日本人が多いんですけど、今、海外の人も集め出だしていて…。海外の人が集め出すとやはり市場が高騰しますね。うちはヨーロッパ、もしくは東南アジアですね。

–––ヨーロッパは、どの辺の方が?
徳永 ヨーロッパは、ドイツ、フランス、イタリアやスペインの方が多いですね。全体の約2割位。あと東南アジアの方だと、タイとかマレーシア。それが全体の1割位で、残り7割が日本人って感じです。日本人の方は、自分たちの同年代か、その上の世代が多いですね。でも今、スニーカーがブームなので、復刻モデルを見た若い世代の子たちがオリジナルを買いにうちに来ます。

–––若い世代?って、具体的にいくつ位の?
徳永 大学生とか20代前半とかが多いですね。東京だけじゃなくて地方からもいらっしゃいます。北海道から九州まで全国からお客さんがいらして、地方の方は上京の際に毎回いらっしゃってくれる感じですね。

–––そうなんですね。若い世代に人気があるのは何ですか?
徳永 ブラントとしては、今はナイキが一番ですね。ナイキ ジョーダン1のオリジナルを探す人が増えています。次はコンバース。うちがオリジナルを売っているんで「U.S.A.企画のCT(CHUCK TAYLOR)ないですか?」ってよく来られます。若い20代前半の方が求めているのは、ナイキ、コンバースがメインで問い合わせもそこに集中しています。でも、今ちょっとプーマも若い子たちに少しずつ浸透していて、うちのお客さんは結構履いてる子が多いです。現行の物も含めて。僕が普段プーマを履いていることが多いから、ということもあると思うんですけど。でもこれはうれしいことですね。

–––1番多いお客さんの世代は?
徳永 僕らと同年代の方が多いです(40代半ば)。

–––その世代には何が人気なのですか?
徳永 アディダス、プーマ、コンバースですね。

–––えっ、ナイキは?
徳永 僕らの世代に関しては、ナイキはもうみんな1回通っちゃっているんですよね。若い頃にジョーダンが流行って、みんな1回履いているから、オリジナルを今買うという感覚はないんでしょうね。

–––上の世代はどれ位まで?
徳永 70代半ば位の人がいらっしゃいますね。ファッションが好きで、車、バイクも好きって方なんですけど。ヴィンテージのGパンも好きで、それを履くときに今のスニーカーを履くとあまり合わないのでうちに来られる、って感じです。

–––お2人が考えるヴィンテージスニーカーの魅力とは?
徳永 自分が一番好きなのは重量感。重いことがエレガントだと自分は思っちゃう。今のスニーカーは軽いので少し物足りないっていうか。あと、見た感じ、全体的な雰囲気とかも含めて好きですね。復刻モデルは、何もかもが全然違うんですよね(苦笑)。先ほど言いましたけど、減りはしても、もう絶対増えないものだからこそ魅力があるんでしょうね。

–––お客さんもそういう感覚で好きな方が多いですか?
徳永 そうですね。僕と似ていると思います。

–––初歩的な質問ですが、国井さんはヴィンテージスニーカーを履きますか?
国井 履かないです。

–––でもさっき徳永さんのお店にも行ったって?
国井 行きました。ヴィンテージスニーカーは結構持っていますよ。持っていますけど履かないです。

–––買って持っているのに履かない?
国井 僕は単純に企画をする上でのデザインソースやインスパイアを求めてオリジナルを買っているんです。

–––履かない国井さんだけど(苦笑)、国井さんが考えるヴィンテージスニーカーの魅力とは?
国井 先ほど徳永さんが言われたとおり、やっぱり現存数が限られているっていうのと、復刻モデルとオリジナルは絶対的な違いがある、ということですね。やっぱり本物がいいっていう人がいますから。

–––復刻モデルとオリジナルの絶対的な違いとは何ですか?
国井 本物は本物でしかない、というのが僕のヴィンテージ観というか、オリジナルに対する考え方なんです。復刻は復刻なりの意味をもたらさないと単なる模倣品っていうか…。意味や意義のない復刻モデルは単なる偽物でしかないって思っています。よくミタスニーカーズのSNSで何々モデルを復刻してくださいっていうのが未だに多いんですけど、それは僕の仕事じゃなくて、メーカーさんの仕事なんです。なので、オリジナルに対して自分が手を加えて企画するんだったら、コラボレーションモデルとして意味があると思っています。実は 21、22歳の頃、雑誌のインタビューで「汚いヴィンテージを履くぐらいだったら、きれいな復刻履きたい」と言って、僕らより上の世代から、国井は何も分かってないって、めちゃくちゃ反感食らったことがあるんです。だから僕としての「その答え」がコラボレーションモデルです。今でも企画したコラボレーションモデルはオリジナルと別物であるから意味があり価値があると思っていることに変わりありません。

–––昨今、若い世代で古着がトレンドになっていることで、スニーカーの嗜好に影響はありますか?
徳永 あると思います。古着と新品のスニーカーはあまり合わない。それは相性みたいな感じで。だからうちのお店も20代前半の若い世代のお客さんが増えましたし。僕は普段、ヴィンテージではないプーマを履いていることが多いので、新品のプーマを履いて来る若い世代のお客さんも増えました、プーマ スウェードとか。最近は下北沢の街でもよく見かけるようになりましたね。下北沢全体も古着屋さんが増えた影響で若い世代の方が多くなりました。あと、下北沢はライブハウスや劇場もあるのでバンドのメンバーがステージ用に買っていかれることも多いです。劇場の舞台衣装としてスタイリストさんが来られたりとか。

–––国井さんはどうですか?
国井 僕はスニーカー屋なのでファッションは語れないですけど、足元を際立たせるよりは、スタイルになじむ靴に回帰している気がします。その中でも人と差をつけたいっていう人もいるので、オリジナルのヴィンテージの靴を探して掘り出してる人もいるし、ヴィンテージじゃなくても、経年変化を表現してる新品を履いてる人もいる。さらにそこにカスタムを頼んだり、自分の手でヴィンテージ加工を施す人もいる。最近のPVを見ていても、若いヒップホップアーティストがジョーダン1のオリジナルを履いてることが多くなった。ロックだとオリジナルのコンバース(チャックテイラー)を履いてたりする。どう考えても世代的にオリジナルのスニーカー持っているわけがないから、ソーマさんとかで探して買っているんでしょうね。

–––今の若い世代はそんな感覚なんですね
国井 「ストリート」っていう定義も昔の「ストリート」の定義と随分変わったような気がします。なので古着の定義も、今の若い子が思っている古着の定義と、僕ら世代やもっと上の世代の古着の定義は、また全然違ったものになっていると思います。

–––ヴィンテージスニーカー市場の未来はどうなっていくと思いますか?
徳永 そうですね・・・。さっき言ったように半世紀物が出てきているので、ヴィンテージっていうカテゴリーより、少しアンティーク寄りになるんじゃないかなと。履かなくて持ってるっていう人が増えているので。要は飾りというかコレクションで絵画とか壺とかと同じにような感じになるかも知れませんね。

–––国井さんはどうなると予想しますか?
「運動靴は壊れたら捨てるけど、スニーカーは壊れても捨てれない」と昔、海外の媒体に答えたことがあるんです。本来の目的を果たした後のスニーカーは唯一無二のアーカイブとして昇華すると思っているから、加水分解しても大切に保管する。だから、古着とかヴィンテージは、あくまで着用することが前提で、履けない状態であればアンティークとして手元に置いておく。徳永さんと同じ感じですね。今後、懸念しているのは、良くも悪くもヴィンテージスニーカーをお金にすることしか考えてない人が増えること(高く転売して)。もうすでにちょっとずつ入ってきているようなので。
徳永 入ってきてますね(苦笑)。
国井 外野がガチャガチャ入ってきて不相応な高値になって…。それで本当のヴィンテージスニーカーファンの熱が冷めて、そのシーンから離れていっちゃったりするともう最悪。それが心配です。

About diversification of sneaker culture
スニーカー文化の多様化について

–––本誌最新号でも取材しましたが、カスタマイザーが増加し、カスタムリペアショップがオープンしたりしています。カスタムスニーカーについてどう思われていますか?
徳永 盛り上がっているみたいですね。でも実はあまり沢山の実物を見たことがないんです。カスタムやってる人が店に持って来てくれたりとかはあったんですけど。こうやっているんですよって。何人かいますね。スワップ(ソール張り替え)したりとかは多いですね。自分がやらないので具体的なイメージはないんですけど、今、流行っている感覚はありますね。

–––国井さんはどうですか?
国井 カスタムスニーカーと言えば、僕がやらせてもらっているコラボレーションとかSMU(Special Make-Upの略)が最上級のカスタムスニーカーだと思います。東京でいじってカスタムしたものなので、インソールなどに『東京改』って入れてもらっているわけで。既存のスニーカーにSMUをやっているだけでデザイナー面してる人たちも(苦笑)、世界中で増えてますけど。それはデザインでななくて、あくまでカスタム。例えば昔、自分のスタイリングに取り込むために、シューレースを変えたり、自分でソールに色を塗っていたけど、それと一緒だと思います。シューズカスタマイズブランドであるフォックストロットユニフォーム(ヴィンテージカスタム用品)も今のスタイリングに取り込みやすいようにするためのカスタム用品だからこそ注目されているんだと思います。

–––フォックストロットユニフォームは、セールス的にはどうなんですか?
国井 ソールやアッパーを塗るペンをはじめ、経年変化を表現したシューレースも再入荷の度に完売する程、好評です。

–––ということはヴィンテージカスタムする人がめちゃくちゃ増えてるってこと?
国井 増えてますね。本当はこういうのがあったらいいなが、カスタムの初期衝動だったりするから。新品の真新しい均一なソールの状態よりは、より馴染むように、エージングできるペンで自分好みに塗って履くんです。

–––その人によって程度が違いますよね
国井 はい。例えばガンダムのプラモデルを買って説明書を読んでそのまま作る人もいれば、エアブラシとかで物凄く細かくリアリティーを求める人もいる。プラモデルを作る感覚にすごく似ていると思います。基本的に男は、自分でいじって加工して自分だけのものにするのが好きな生き物だと思うので。

–––国井さんといえば、2012年にソールを黄色にヴィンテージ加工したアディダスのキャンパスを作りましたよね?
国井 企画させて貰いました。実はそのキャンパスを履いている人を最近よく見るんですよね、街でも。約10年前のスニーカーを引っ張り出して今履いているんですよ。ソールも加水分解しないので10年前のスニーカーでも今でも充分履けるから。

–––それはすごい話ですね…
国井 はい。でも約10年前にあのヴィンテージ加工したキャンパスを購入して下さった人って、自分のタイミングで履きたいから、買ったけどそのまま寝かせてストックしてた人も多いと思うんです。なぜなら約10年経った靴なのに、デッドストックの状態でミタスニーカーズに履いて来る人が多いんです(笑)。

–––2021年の今、リサイクルのインフラも拡大して、ソール交換を含めたリペア修理をスタートしたメーカーも出てきましたね
徳永 いい傾向だと思います、スニーカーを大事にするっていうことですからね。ただその修理代がそのスニーカーの値段を超えたりする場合もある。そうした時にその人がどう思うかですよね。それでもそれをずっと履きたいのか、もう1足新品を買ったほうがいい?って思うのか。

–––そうですね…リペアの度合いによっては。
徳永 でもこういう傾向はいいですよね。スニーカーの価値が高くなったというか、スニーカー自体の格が上がったじゃないですけど。

–––カスタムの選択肢が確実に増えていますよね
国井 はい。僕もブランドとのコラボレーションで別々のモデルのアッパーとソールをハイブリッドしたシューズを結構作ったりしましたけど、それを今、コンシューマー目線でもできるようになったっていうか。昔はカスタムできる範囲がすごく限られていたけど今は本当にすごいですよね。もう個人個人が「自分が履きたいスニーカーを自分でカスタムして履く時代」になったというか。でも、その欲求はどんどん高くなって、個人のスキルも上がってくるから、その要望に対してインフラが拡大して対応しているって感じがありますね。

–––もっとスニーカーを楽しむために、これからどうなることが理想だと考えますか?
国井 現在のスニーカーって、究極の効率化を図って作られる大量生産の産物じゃないですか。でも、スニーカーファンの人って効率的なものが好きな人って決して多くない。カスタムしない前提の現行製品であれば、逆に非効率の賜物みたいなスニーカーにこそ価値を感じる人たちが多い。生産国だったり、生産の背景から素材に至るまで、そういうものに対して価値を見出すのはそれでいいと思います。でも僕は極端になるのはあまりいいとは思わなくて、程よいバランスが大切かなって思うんです。希少なスニーカーを長く大事に履くことも大切だけど、新しい物をあえて体感する刺激も大切だと思う。一番良くないのは、一般的にハイプと言われるスニーカーを買って、インスタ上げたらもう要らないから転売する、というのが靴屋として一番悲しいこと。僕の理想は、お気に入りのスニーカーは大切に長く履いて愛用しながら、懐古主義にならずに、これはと思う新しいスニーカーはどんどん履いてみる。それで物足りなければカスタムすればいい。そうするともっとスニーカーを履くことが多角的に面白くなると思いますね。
徳永 今って色々な選択肢があって本当にいい状況ですよね。この状況がもっと長く続けばいいなとは思っています。ヴィンテージスニーカーに関して言えば、加熱し過ぎることが一番よくない。流行り過ぎちゃうと冷めるときはどっと下がっちゃうんで。そういうことを何回も体験してるから。それを願いたいですね。

取材協力店:
mita sneakers

東京都台東区上野4-7-8 アメ横センタービル 1,2F
11:00〜19:30(平日)
10:00〜19:30(土日・祝日)
定休日:第三水曜日
03-3832-8346
http://www.mita-sneakers.co.jp

Soma Shimokitazawa Vintage Sneakers Shop
(下北沢北口ヴィンテージスニーカー専門店)

東京都世田谷区北沢2-33-6 飯嶋ビル202
15:00〜20:00
不定休
03-3481-0307
https://blog.goo.ne.jp/soma-vintage
https://www.instagram.com/somashimokitazawa/?hl=ja

 

PUMA challenged for the first time
PUMA “THE NEVERWORN” Coming soon…

多様化する現代のスニーカーマーケットにプーマ初となるヴィンテージ加工を施した“ザ ネバーウォーン”が登場した。新製品を生産するよりも遥かに時間、労力が掛かるにもかかわらず、完成したモデルは、発売当時からの経年変化をディテールに至るまで忠実に作り込まれていた。今回リリースされる2モデルは、1979年にユーゴスラビアで生産されたスウェードと1987年に誕生したスリップストリーム。2人に率直な感想を聞いた。

About Original SUEDE & SLIPSTREAM
オリジナルのプーマ スウェードとスリップストリームについて

–––まず今回リリースされるスウェードとスリップストリームのオリジナルについて教えてください
徳永 はい。どちらのモデルも入荷すればソーマで販売しています。ただ人気商品なんで入ると早めになくなってしまいますね。
最近では値段もちょっと上がっています。スウェードとクライドはプーマの中でも人気があって、特にクライドは今、探してる方がめちゃくちゃ多くなっていますね。

SUEDE 1979 (Made in Yugoslavia):left
CLYDE 70’S (Made in Yugoslavia):ight

–––もしかして海外の方とかも?
徳永 はい。世界で見るとヨーロッパ系の人が多いですね。ドイツ、フランス、スペインの方が特に多いんですけど、近年では日本でも人気があって、日本人の若い子が狙ってます、ずっと。

–––若い子とはさっきの20代前半の世代ですか?
徳永 はい。20代前半だけでなく、20代半ばから30代までいますね。でもサイズ感的にちょっと履いてみないと分かんない商品が多いので、ネットで買ってサイズが合わないってお店に持って来られちゃうことが多いんです。まあ、ヴィンテージって個体差があるし、実際に履いてみないと分からないっていうのはありますね。

–––そうですよね。でもネットで購入される比率はどれ位ですか?
徳永 3割ぐらいですかね。ただ少し大きめのサイズをお勧めしています。小さいと足が痛くてどうしょうもないけど、大きいとどうにか履けてしまう場合もあるので。

–––20代前半の世代がプーマ クライドのオリジナルを履くってすごいことですね
徳永 すごいですよ。飾るわけでなく履く用なんです。今、相場だと10万位しちゃうことが多いですけど。さすがに20代前半の方が買って普段履きとして毎日は履かないんでしょうけど、大事にみんな履いてくれいてると思います。特にプーマに関しては愛情が深い子が多いんで。40代、50代の方も多くいらっしゃいますが、最近は若い熱が強いなと感じてます(笑)。

–––スリップストリームはどうですか?
徳永 スリップストリームやビーストは一時期、めちゃくちゃ流行ったので今でも人気がありますね。すごく根強いファンがいらっしゃるんですよ。でもスウェード、クライドと比べると少しマニアックなスニーカーファンの方になりますね。

SLIPSTREAM SNAKE 1987 (Made in Taiwan)

About “THE NEVER WORN”
プーマ “ザ ネヴァーウォーン”ついて

–––それではザ ネバーウォーンの製品を見た率直な感想を教えてください
国井 実はネバーウォーンの企画が走る前に、プーマ ジャパン スタッフから、プーマの今後についてのフィードバックの機会があったんです。僕は「過度な企画ではなくて、もっとシンプルなアイデアのほうが良くないですか」って提案して。具体的には昔は付いていた「目付きのプーマキャット」だったんです。プーマって他のブランドよりもロゴに対して本当に超厳しくて。プーマキャットとかプーマロゴ、カラーとかもすごい制限があって。なので今回、強固なレギュレーションを壊してまで「目付きのプーマキャット」にしてくれたことは個人的にもうれしいですね。

国井 現物を見た感想は・・・さっき話をしたとおり、オリジナルと復刻は明らかに違うし、復刻はある意味で偽物なので。だから、このスペックでこの仕様なのにプーマキャットに目が付いてたらおかしいとか、凝り固まった考えはなしにしてもらいたいですね。当時のオリジナルでないので、別物としての楽しみ方で見てほしい。当時のオリジナル商品ってもっと個体差もあったし(苦笑)、作るタイミングによって全然違う物とかが本当にいっぱいあった。1979年なんて何が正解とかないぐらいの時代のものだから。昔のプーマでこういうディテールがあったんだっていうのを再確認してもらえればいいなと思います。

–––今回のプーマの試みについては?
国井 SNSの相互通行で消費者の需要をきちっと捉えて製品に落としたって感じですね。世の中的にはB to C(企業→消費者)もどんどん増えてるけど、プーマってあんな大きな会社なのに、そこをちゃんとキャッチできているっていうのは、今の時代にフィットしている会社なんだと思います。ファン心理とか消費者、小売りとかの意見を組んで商品化できるのは本当に素晴らしいことだと。

徳永 正直、うれしいですね。ヴィンテージ加工した商品が新品で出るってことは。自分がいいと思って長くやってきたヴィンテージスニーカーの需要が増えている証拠だと思うので。あと、これを履いて経年した後にどうなるかっていうのも楽しみです。なので個人的に履いてみたいです。

–––徳永さんも履いてみたいと思うんですね?
履いてみたいですよ、もちろん。

–––それは後ろにプーマ ジャパン スタッフが居るからではなく?
徳永 プーマ ジャパンさんがいるからかも知れません(笑)。いやいやそれは冗談で本当に履いてみたいです。ソーマでの販売はないですけど、うちのお客さんでお店に来る時に履いてくる若い世代の人が多いかなと思います。ミタスニーカーズさんでは販売するみたいなので。

–––ミタスニーカーズでは買えるんですか?
国井 はい。今のスタイリングに取り込みたくてこのスニーカーをミタスニーカーズで買った人が、やっぱり一度本物のオリジナルを履いてみたいとソーマさんに行くかもしれないし、逆に現行のスウェードが欲しいと思って、またミタスニーカーズに戻ってきてくれるかもしれない。このザ ネバーウォーンのスウェードを買って履いた人が次にどういう行動をとるかが楽しみですね。なのでプーマにとって、いい意味でターニングポイントになるスウェードだなと思うし、スウェードはこれだけ細かく加工して1万2千円+税というのはとてもユーザーフレンドリーだと思います。

–––メーカーが提案するヴィンテージ加工スニーカーの今後については?
国井 プーマが「今」を象徴する形を分かりやすく作ったのがザ ネバーウォーン。先ほど言ったとおりヴィンテージがトレンドなので、増えていくことは多分ないと思います。今のトレンドにフィットしたものをモダンに表現して、シーズナルモデルとして提案しているだけなので。でもこれから定番モデルのソールの色は、もうちょっと落ち着くかと。真っ白のソールよりは少し黄色味がかった色ほうが多分いろんな人が履きやすいと思うので。

–––どんな人がザ ネバーウォーンを購入すると思いますか?
国井 このモデルを面白いって思う人って、スニーカーに対して知識がある人だと思うんですね。なのでスニーカーが本当に好きなスニーカーファン、プーマファン。あとファッションコンシャスな人。先ほども言いましたけど、ザ ネバーウォーンをきっかけに今後買うスニーカーの感覚が変わる一足になるかも知れない。今の時代にすごく合っている企画だと思います。

–––最後に読者にメッセージをお願いします
徳永 そうですね…。今、現行の物を買ってる方にもオリジナルっていう存在があることも知ってもらいたいですし、それを手に取って見れる場所が東京・下北沢にあるんで、一度お店に来てもらえればありがたいです。僕が必ずいますので。
国井 ミタスニーカーズは、スニーカーの過去・現在・未来を復刻・現行・コラボレーションで網羅するタイムマシーンのような靴屋で、ソーマはスニーカーのアーカイブや歴史的傑作を買うことができる美術館のような靴屋だと思っています。スニーカーの楽しみ方って本来は様々だと思うので、東京に来た際は、新品、ヴィンテージに関係なく、色んなスニーカー屋巡りをしたらスニーカーの視野がもっと広がると思います。

 

PUMA challenged for the first time
PUMA “THE NEVERWORN”

ザ ネバーウォーンは、1979年から1980年代中期に製造されたアーカイブモデルからインスピレーションを得たカプセルコレクション。何十年も履かれず保管されてきたデッドストックを新しい解釈で現代に復活させたモデルは、プーマ スウェードとスリップストリーム ロウ。アパレルは、プーマを象徴するT7 トラック トップやTシャツ、パーカー、パンツなどのアイテムにアーカイブのグラフィックやディテールが落とし込まれたラインアップになっている。

PUMA THE NEVERWORN Collection
Photo courtesy of PUMS Japan

PUMA “THE NEVERWORN”
SUEDE VTG THE NEVERWORN
SLIPSTREAM LO THE NEVERWORN

SUEDE VTG THE NEVERWORN
ザ ネバーウォーンのシューズは、プーマのアーカイブモデルを代表するプーマ スウェードとスリップストリーム ロウ。四十年もの間、ずっと棚に並んでいたシューズボックスから、今取り出したかのようなスウェード VTG ザ ネバーウォーン。アッパーにヴィンテージ風の素材を採用し、レトロなディテール、グラフィックを組み合わせ、さらに色褪せたソールやアーカイブを示すハングタグなどヴィンテージ感のあるデザインにこだわり抜いた一足。13,200円

黄ばんだソールは長年の経年変化を感じさせ、ソールとアッパーの間からは接着剤がはみ出し、当時稚拙だった生産過程も忠実に表現されている。シュータンに付いたタグは半分取れかけ、プーマの象徴であるプーマキャットには現行モデルはありえない目が加えられた「目付きのプーマキャット」となっている。

SLIPSTREAM LOW THE NEVERWORN

スリップストリームは、1987年に誕生したバスケットボールシューズでパフォーマンス、安定性、クッション性の高さから、当時多くのバスケットボールプレーヤーに愛された名作。また、ヒップホップ、ダンスクルーにも支持され、ストリートでも人気を博し、未だにオリジナルを探す根強いファンが存在するプーマを代表する一足。15,400円

ザ ネバ―ウォーン コレクションについて、本誌にも出演してもらったことがあるプーマ グローバルのヘルムート・フィッシャー氏は「アーカイブは私たちの情熱であり、私にとって最も重要なことを象徴しています。それは、古いものから学び、新しいものを生み出すことです。過去の遺産がなければ未来はありません。アーカイブはプーマの魂であり、ここから新しい商品が生み出されるのです。」とコメントしている。

ザ ネバーウォーンコレクションは、12月11日(土)より、
プーマストア 原宿キャットストリート、プーマストア大阪、
プーマストア京都、プーマストア福岡、プーマ公式オンラインストア、
一部取扱い店舗にて販売される。

INFORMATION
取材協力:
プーマジャパン株式会社
INFORMATION
プーマ お客様サービス
0120-125-150
www.puma.jp

pagetop