TECHNICAL UTILITY FOOTWEAR
DESCENTE ALLTERRAIN “VERTHER”
Debut in October 2023
デサント オルテラインから、
ついにフットウエアが誕生
デサント オルテラインからニューモデルが届いた。オルテラインといえば、水沢ダウンを源泉に真のモノづくりを追求し、トレンドに流されないアイテムが世界中から注目を集め続けているデサントの最高級ライン。完成したフットウエアは、無駄のないフォルムがオルテラインらしい一足だった。
TECHNICAL UTILITY FOOTWEAR
DESCENTE ALLTERRAIN “VERTHER”
Ryoma Hayashi Interview
オルテラインのプロダクトは「形式は機能に従う」をキーワードに、機能を含ませて組み立てるという、まるで建築のような作り方で装飾のためのデザインは一切ない。今回誕生したシーンレス、エイジレス、タイムレスがテーマのオルテラインのフットウエア「ヴェルサー」は、2020年に編集部が取材したデルタ(トライアスロン専用シューズ)がベースモデルとなっていた。フットウエア部門の中心人物であり、企画開発担当の林 亮誠氏(工学博士)を再び取材した。
誕生までの経緯
–––ヴェルサーはいつ頃から企画していたのでしょうか
東京オリンピック直前の2018年にトライアスロンシューズのデルタを開発したのですが、実はその時から構想はあったんです。当時はまだ完成形のイメージは無かったのですが、何年後かにこれを必ずライフスタイルシューズとして商品化しようと考えていました。トライアスロンシューズは、契約選手の不調でオリンピックでの活躍は叶いませんでしたが、中国では普段履きとしてものすごく人気が出て、構想実現に向けて実績を重ねると同時にイメージもアップデートされ明確になっていきました。その後、コロナもあって生産体制が危機的状況に陥った時期もありましたが、今回何とかリリースに漕ぎ着けました。
DESCENTE “Triathlon Shoes “DELTA TRI OP”
SHOES MASTER Web SPECIAL
DESCENTE “Triathlon Shoes PROJECT” part1(2020年3月公開)
https://www.shoesmaster.jp/special/descente-global-fw-triathlon-shoes-project-part1/
DESCENTE “Triathlon Shoes PROJECT” part2(2020年3月公開)
https://www.shoesmaster.jp/special/descente-global-fw-triathlon-shoes-project-part2/
プロダクトについて
–––完成したヴェルサーのコンセプトを改めて教えてください
2020年のデルタはトップアスリート向けでしたが、今回は幅広いレンジの一般コンシューマーに寄せた開発という点がとても大きなポイントになりました。日本の季節の変化や地形にフィットする機能性をテーマに、デルタの開発で培ったトップアスリート向けの設計を落とし込み、デザインに至るまで、オルテラインを愛好してくれているお客様の期待を裏切らない満足度の靴を作ること。デサントブランドとしてコンシューマー向けのコンセプトやターゲットでのシューズ開発は初めてでしたし、社内の期待も大きかったので、完成までの道のりは長かったですね。
DESCENTE ALLTERRAIN “VERTHER”
なので、テストサンプルも2桁を超え、品位や品質、安全性など、答えが出るまで1年以上かかりました。ただ、デルタの時と同様に「デサントらしい靴を作ろう」というビジョン、ミッションで取り組んでいましたので、正直、ずっとプレッシャーとの闘いでしたけど、最終的には期待を裏切らないオルテラインらしい一足に仕上がっていると思います。
–––アッパー素材、アッパーの特徴を教えてください。
アッパーの設計は透湿防水設計になっています。実はこれゴアテックスと一緒で、湿度を通しながら水は通さないという機能なんです。簡単に言うと足が蒸れにくい。今では防水は当たり前になっていますが、湿度コントロールも加えた機能性があるというのは大きなポイントですね。夏の暑い日や湿気の高い雨の日など電車や職場内で、足が湿気でむずむずすることってあるじゃないですか。実際に履いて試したのですが、足が蒸れにくく快適でした。また、シーンレス、エイジレス、タイムレスで履けるように、短パンやデニム、またスラックスにも合わせられるデザイン性も考慮しました。
もっと具体的に透湿防水設計を説明すると、通常は靴の内部に別のシューズを入れ込むように設計しますが、これによって靴が硬くなったりごわついたりして、シルエットのコントロールも難しくなります。そこで新たなアプローチを考えまして、ウエアのアウタージャケットで使用される生地を接着する技術の「ボンディング」からインスピレーションを得て、生地そのものに機能素材を接着し、生地自体に機能性を持たせる構造で作ってみました。
アウタージャケットの構造は、中心となる生地の外側に防水フィルムを貼り、内側にインナー生地を貼ります。この構造をシューズに応用することで、従来の2枚構造から1枚の構造に変えることができました。このアイデアはアパレルならではで、靴メーカーではコストの問題もあるためなかなかできない発想なんです。素材はデサントでオリジナルに開発をした柔らかい、ラバーライクな見た目が特徴的なマイクロファイブベースの人工皮革です。これもアパレルならではのアプローチで、ウエアでも多用するマットなタイプの生地をリクエストしました。
工場からは、失敗したものとして試作品が届きましたが、失敗は成功のもとですね。こちらからするとそれがすごく良くてそのまま採用になりました。だからこの素材は、デサントにしかないオリジナルです。また、シューレースのシステムも特徴的で、トライアスロンシューズからのアイデアを活用しています。トライアスロンに関わることで得たノウハウから生まれた脱ぎ履きが容易な仕様は、日本以外の同じ文化を持つ中国や韓国などアジア市場でとても好評です。さらに、ヒールカウンターもスタビリティーを搭載し長時間の使用でも疲れにくい設計になっています。トライアスロンのトップアスリート向けに開発された機能が、一般コンシューマーの生活の中に活かされることも大きなポイントだと思っています。
–––ミッドソールについて教えてください
原型となったデルタは、フィット感、ホールド感、そして全体のバランスにおいての評価が高かったので、そのテクノロジーはそのままに、ミッドソールは結構厚くしています。見た目はランニングシューズですが、パフォーマンスシューズと革靴のラストフィット感をフュージョンさせた設計になっていて、履いて上から見ると分かるのですが、革靴を履いたときと同じ風景なんですよね。パフォーマンスに寄り過ぎず、シュッとしたシルエットと言いますか、革靴に見られるトラディショナルな空気感をまとったラストから逆算して、ミッドソールとパターンまでを設計しています。
–––アウトソールとインソールついて教えてください
ビブラムのエクスクルーシブで、デサントオリジナルになります。メガグリップを採用しているので雨の日でも滑りにくいのが特徴です。通常はビブラム側にいろいろとリクエストはできないのですが、今回は特別に東京で履くことを想定して、ディスカッションして一緒に開発しました。東京は、駅の階段、滑りやすい歩道のマンホールやタイルなどグリップ力が必要な道が多いので。
インソールはパフォーマンスシューズでよく使われるオーソライトです。消臭機能のほか、ライフスタイルカテゴリーのシューズにはあまり採用しないカップ(かかと)をしっかり立ち上げたカップインソールにして、ソールとインソールのマッチングを実現させています。こういった側面にも、根本にあるパフォーマンス機能を活かしたいです。パフォーマンスのカテゴリーでは、軽量化を目指すためにオーソライトをあえて使わない選択が多いですが、オルテラインでは長時間歩いても快適に過ごせるよう採用しています。パフォーマンスをライフスタイルにどう融合させるかが重要なポイントとなっています。
–––どんな場所で履くのがベストでしょうか?
やはり街ですね。キャンプとかトレイルではなくタウンです。東京の地面を見て歩くと、石畳やタイル、砂利、アスファルト、そして滑りやすいマンホール、階段、傾斜など、危険な場所含め様々です。そこへ日本特有の春夏秋冬の気候の変動もあって。そういった日常の中で活躍するシューズだと思いますし、カラーリングもブラックなのでビジネスシーンにもフィットすると思います。
今後について
–––今後の展開を教えてください
来年以降、2024〜2025年は、ラインナップを大幅に広げていく予定で、今はオールブラックですが、これからは色彩豊かなバリエーションを増やしていく計画もあり、来年の3月には、デサントならではのライフスタイルシューズの新たな展開を一気にお披露目できると思います。
–––最後に読者、スニーカーファンにメッセージをお願いします
デサントはスポーツメーカーとして長年歩んできましたが、ようやくフットウェアラインがスタートしました。一つ言えるのは「他社と同じことはやらない」ということです。その裏付けは、我々の持つDNAがシューズではなくアパレルだからで、足の服を作るような感覚で、靴作りをしたいと思っています。皆さんには、そういう違いを楽しみにしていただきたいと思います。
林 亮誠 (はやし りょうま)
愛知県生まれ。小学4年生でサッカーを始め、プロサッカー選手を目指す。しかし、高校2年時に自分の実力の限界を知り、サッカー部を退部。夢をサッカースパイク開発に切り替える。人の感性を基に開発を行うことで有名な信州大学感性工学科に入学。工学博士となり、2010年に新卒で株式会社デサントに入社。2年目からアンブロのMDとなり、2014年ワールドカップ時のガンバ大阪・遠藤保仁選手のスパイクを担当。高校時代からの夢を叶える。その後、ルコックスポルティフ、イノヴェイトのMDを経て、現在、デサントシューズの企画開発担当として日々邁進している。
TECHNICAL UTILITY FOOTWEAR
DESCENTE ALLTERRAIN “VERTHER”
Debut in October 2023
TECHNICAL UTILITY FOOTWEAR
DESCENTE ALLTERRAIN “VERTHER”
¥22,000(10月1日発売)
INFORMATION
デサントジャパン株式会社
お客様相談室(フリーダイヤル) 0120-46-0310
https://store.descente.co.jp/descente/