Photo : Masataka Nakada
Edit & Text : Issey Enomoto
SPINGLE, from Bingo to the World
スピングルの現在地と未来像
個性的な巻き上げソールで知られるスピングルムーヴがスピングルと名を変え、ロゴも一新。人気のファッションブランドとのコラボレーションを積極的に展開するなど、新たな動きも見せる。このブランドはいまなにを見据え、これからどこへ向かうのか。広島県府中市の本社を訪れ、その現在地と未来像を探った。
定番と新定番。
ラインナップを拡充しながら、
ブランドの新しい姿を模索。
スピングルの前身であるスピングルムーヴは2002年、広島県府中市のメーカーであるニチマンのファクトリーブランドとして誕生。国内有数のゴム加工技術を生かして開発したヴァルカナイズ製法のレザースニーカーが評判を呼び、多くの熱心なファンを生み出してきた。
広島県府中市のスピングルの自社工場。昔ながらのヴァルカナイズ製法により、型崩れしにくく長持ちするシューズができあがる。
日本人の足にあった木型で履き心地を追求したスピングルのシューズ。自社工場で靴職人の手によって一足一足丁寧につくられる。
今年2024年にブランド名を改め、ロゴも一新。新たなスタートを切ったばかり。「実は当初からスピングルという名前にしたかった。でも、商標の問題でそれができなくて。スタートから22年が経ち、ようやく思いが成就しました」。そう語るのは、スピングルを手掛けるスピングルカンパニー代表の内田貴久。
スピングルカンパニー
代表取締役社長 内田貴久
スピングルといえば独特の巻き上げソールのイメージが強い。強すぎるといってもいい。そのデザインの狙いについて内田は言う。「世の中のシューズはどれも似たりよったり。それでは面白くないでしょ。そこで、ひと目でそれとわかるユニークなデザインのものをつくりたいと考えました」。
広島県府中市にあるスピングルの本社。Nichiman(ニチマン)は同社の親会社であり、内田はその5代目社長。巻き上がったユニークな形状のアウトソールは、ブランドのアイコンとして知られる。
ただ、あまりにも個性的ゆえに、苦手意識を持つ人も少なくないかもしれない。その点は内田も認識しており、「無闇にトレンドを追うつもりはないが、時代性にあったものをつくることは今後も意識したい」と語気を強める。
ブランド立ち上げから関わってきた古参社員の山口 聡によると、「巻き上げソールに次ぐ新定番をつくることはかねてからの課題」という。「巻き上げソールこそがブランドのアイデンティティという意見は根強い。しかし一方で、それだけではいけないという危機感も社内にはあって。近年は、これまでとは違う新定番をつくるべく、ラインナップの拡充を図っています」。
スピングルカンパニー
業務推進部 山口 聡
セレクトショップ勤務を経てスピングルに参画した入社6年目の滝口 真は「巻き上げソールはリピーターも多く、長年愛用してくださるお客様を今後も大切にしていく」とする一方、「ブランドが長く続くには変革も必要」とし、「従来の定番と、新しいブランド像を提案する新定番。その両輪がこれから求められるのでは」とブランドの将来を見つめる。
スピングルカンパニー
東京企画室 滝口 真
近年は人気ブランドとの協業を積極的に展開するほか、7月に広島・福山、9月に東京・銀座と新店を立て続けにオープン。それらの動きからは従来のイメージから脱却しようとする意思も見え隠れする。かねてより製造業が盛んな備後地域で生まれ、世界へと躍進するスピングル。今後の動向も要注目だ。
2024年7月、広島県福山市にオープンした『SPINGLE VINGO GATE』。
最新アイテムのほか、ここでしか買えない限定アイテムも。
「VINGO」はこの地域の旧国名である備後に由来。
SPINGLE VINGO GATE
広島県福山市三之丸1-18
084-983-1777
営業時間 11:00-19:00
2020年から継続的に展開しているノンネイティブとの取り組み。この2点は2024年秋冬モデル。いずれもアッパーはゴアテックス仕様のラフスウェードで、生地の開発からスピングルが担う。
ペンドルトンとの最新コラボレーション。同ブランドを代表するハーディング柄をアッパーに採用。
2021年にリリースされたアンリアレイジとのコラボレーションモデル。アッパーはPVC/レザー。
2024年秋冬新作。ともにゴアテックスのアッパーとヴィブラムソールを採用。ブランドの新たな姿勢を指し示す意欲作だ。上「SP-1903」¥39,600、下「SP-1906」¥37,400
※本記事は、『SHOES MASTER』Vol.42(2024年9月30日発行)の
特集記事を再編集したものです。
INFORMATION
スピングル
Tel.050-3537-1817
https://www.spingle.jp/