Photo : Masataka Nakada(STUH)
Edit & Text : Shin Kawase
rhrn born from new technology
rhrn season 2 AW2020
rhrn 2 MIZUNO ENERZY
2019年2月、スニーカー業界に衝撃が走った。スポーツブランドの老舗、ミズノからブランドのイメージを一新する新たなレーベル“rhrn”(アールエイチアールエヌ)が発表されたのだ。その後、ドーバー ストリート マーケット ギンザで販売されると、競合ブランドが揃う中で即完売。一夜にしてファッション業界からも注目を集める存在となった。2020年7月、rhrn第2章の幕が上がる。
Mizuno’s new brand launched in February 2019
rhrn
RIGHT
HERE,
RIGHT
NOW.
今がその時。
About rhrn 2 MIZUNO ENERZY
Interview with
Takeshi Saito (MIZUNO SPORTS STYLE)
ミズノ株式会社
グローバルフットウエアプロダクト本部
企画部ライフスタイル企画課
齊藤健史
rhrnの名付け親であり、rhrnのすべてに関わっているのがミズノのライフスタイル企画課の齊藤健史氏である。シーズン2となる今回の“rhrn 2”の最大の特徴は、ミズノが開発したニューテクノロジー、“MIZUNO ENERZY”(ミズノエナジー)を搭載していること。取材をオファーし、編集部のスタジオに現れた齊藤氏にニューモデルとrhrnの未来についてインタビューした。
–––“rhrn 2”を企画するに至った経緯を教えてください
社内のランニングチームから「新しい機能素材を搭載したランニングシューズを企画しているので、ライフスタイル用に面白くアレンジできないか?」と相談されたんです。それが先日発表された、新機能素材のMIZUNO ENERZYを搭載したランニングシューズで、「rhrn 2」を企画したきっかけになりました。
MIZUNO “THE MIZUNO ENERZY”
¥25,000+tax
(Released Wednesday, July 1, 2020)
–––ミズノ公式オンラインショップでは発売と同時にソールドアウトでしたね。編集部がどよめきました。
そうなんですよ、僕らも驚きました。7月1日に発売されたのは、まず体感してもらうためのものとして、あくまでもコンセプトモデルとしてローンチされたものなんです。オンラインショップでは実際に現物も見られないし、足入れもできないし、しかも税込みで27,500円という高額にも関わらずだったので。
–––今、話題となっているランニングシューズ「THE MIZUNO ENERZY(商品名)」をライフスタイル用にアレンジしてすぐ発売するのは、いい流れですね
はい。THE MIZUNO ENERZYは極秘で進められていて、同じフロアに居ても、いつどのタイミングでどういう形で出るのか、僕らはまったく知らなくて。なんかすごいものがあるなぁ、面白そうだなぁとずっと思ってはいたので当時開発課課長の佐藤さんから小出しで伺ってはいたんですけど、プロジェクトが極秘だったので全貌がなかなか聞けなくて。そしたら向こうから相談に来てくれて、このタイミングでローンチすることができました。僕がもともとランニングチーム所属だったので頼みやすかったのかと思います。
–––ランニングチームにもあのrhrnのデビューが衝撃的だったんでしょうね
僕としてもrhrnの第1弾をローンチした後で、rhrn第2弾をちょうど選定しようとしていたのでタイミングが良かったんです。かつてないまったく新しいミズノのテクノロジーを使って、パフォーマンスとライフスタイルの垣根を超えたシューズを作る。そうすれば、より多くの人にMIZUNO ENERZY(素材名)を体感してもらえるきっかけになるかなぁと。スニーカーとしてのミズノの新しい価値観を世界にもっと広めるためには、見た目にもインパクトを出せるMIZUNO ENERZYはベストな新素材でした。
–––新素材「MIZUNO ENERZY」の特徴を分かりやすく教えてもらえますか?
今までミズノのコアテクノロジーは「MIZUNO WAVE」という、ウェーブ状の反発板が靴に入っていることによって安定と反発を促すものでした。「MIZUNO ENERZY」は、従来の考え方を全部取っ払って、素材に特化しているのが最大の特徴です。ミズノには、ゴルフや野球などの用具を開発している部署があって、その部署とランニングチームが約2年をかけて開発したミズノ史上最高の反発性を実現したシューズが「THE MIZUNO ENERZY」なんです。※シューズ用高反発ソール素材であるMIZUNO ENERZYは「MIZUNO ENERZY」「MIZUNO ENERZY LITE」「MIZUNO ENERZY CORE」の3タイプで構成され、rhrn 2は、最上位タイプのコアを搭載。詳細は、特集の後半で開発担当者のインタビューにて。
–––ついに完成したrhrn 2の特徴を教えてください
第1弾は、ブラックをベースに分かりやすくモード向けというか、ミズノとしてはかつてないアプローチだったんですけど、今回は逆にミズノファンの方にも履いてもらいたいという想いで作りました。2020年は大きなスポーツの祭典が日本で行われる予定だったので、過去の大会でミズノが日本選手団をサポートした時に選手に提供されたソックスをモチーフにアッパーをデザインし、MIZUNO ENERZYを搭載したソールを付けたのがrhrn 2の特徴となります。
アッパーはソックスタイプなので第1弾rhrnの3Dニットアッパーと同じように見えますが、rhrn 2はよりシンプルに「靴下にフワッフワの雲がくっついちゃった」をコンセプトに、素材も見た目も構造もいわゆる「靴下」を意識しました。
–––rhrn 2のデザインコンセプトは?
今回はお祭り的な感覚で、よりラフに楽しんで履いていただけるように考えました。世界的なスポーツの祭典が日本で行われる。やっぱりみんな盛り上がりたいと思っていると思うし、僕も盛り上がりたい。これを身に付けることによって大和魂というか、気持ちが燃える一端を担いたいなと思ったんです。ミズノって、テクノロジーはもちろんですけど、今まで日本をはじめ多くのナショナルチームを長年サポートしてきた歴史があって、誰が見てもそのチームだとわかるような秀逸なデザイン、配色がたくさんあることも貴重な財産、魅力だと思うんです。そういうものって本来は、選ばれし国を代表する選手しか身につけられなくて、僕はそこに憧れを感じていた一人でもあるので、今回はそこをデザインのコンセプトにしました。1年延期が決定しましたけど、日本を代表するスポーツブランドであるミズノが、今まで培ってきたアイコニックな要素を取り入れたいなと思い作りました。
–––rhrn 2でこだわった所を教えてください
ソールは、説明がなくても見た目で感じられるように、意図してランニングチームのデザイナーが特徴的にしているので、何も加えずにそのまま使いたかったんです。なのでただ単に色を赤から白に変えているだけです。あとは一度履いてもらえれば分かるんですけど、反発と浮遊感がとにかくすごいんです。だから色々とデザインを乗っけるよりもシンプルに、雲の上をソックスで歩いているような靴にしたかった。こだわりとしては、どこまで本当のソックスに近づけられるのか?をミズノの各部署の技術を集結して作り上げたアッパーになります。
–––ソックスを付けるだけだと耐久性に問題が出ますよね
そうなんです。なので丈夫にするためにソックスを作るような機械を使って二重構造にし、靴下の構造はそのままに、さらに通気性も良くしてあります。そうしてようやく、靴下を履いた状態でフワフワの雲の上に乗っかってるみたいなrhrn 2が完成しました。
–––rhrn 2は、どんな方に履いて欲しいと思いますか?
先ほど言ったように、今までミズノを履いてなかった方たちにも、こういったアプローチをすることによって「日本代表を応援したいからこれ履きたい」となればいいなと思います。そしたらミズノを履く理由ができるので。もちろん今までずっとミズノを好きでいてくださっているファンの方たちにも、一緒に履いて応援できるグッズとして提供できたらうれしいです。
rhrn 2 MIZUNO ENERZY
¥25,000+tax
–––いつから発売されるのですか?
8月4日火曜日からラフォーレ原宿でポップアップ(展示)をやらせていただく予定になっています。ユニセックスサイズなので、男女問わず、ミズノをよく知ってる人、よく知らない人、履いたことがあるない関係なく、一度履いてみてほしいです。MIZUNO ENERZYの反発の心地よさ、ソックスで雲の上を歩いている感じを体感してほしい。発売は、8月7日金曜日からになっています。
–––販売店舗を教えてください
ラフォーレ原宿、ドーバー ストリート マーケット ギンザ、NUBIAN、ビームスジャパン。スニーカーショップでは、ミタスニーカーズと代官山に去年オープンしたSNSでの取り扱いになります。あとは、ミズノの直営2店舗で販売します。そして、展開店舗は限られますが、スポーツの祭典で選手が実際に着用する予定のジャージ素材を使ったジャケット、Tシャツ、ショーツなども各2色展開で店舗を限定して発売される予定になっています。
Voice of Leasing Officer
Laforet HARAJUKU
–––rhrnが誕生する前、ミズノに対してどんなイメージを持っていましたか?
ドメスティックのスポーツメーカーとして、幅広い世代に高い認知を誇り、サッカー選手はじめアスリートの足元を支えてきた世界屈指のブランド。Mラインからはじまり、時代に合わせて象徴的なモデルも生み出してきているイメージです。
–––rhrn 2を展開することになった経緯を教えてください
ラフォーレ原宿2FのPOPUPSHOPスペースを設計したスイッチラボ社よりご縁を作って頂いたのがきっかけ。 近年、歴史に根差した新しい提案「KAZOKU」をはじめ、新たな提案をしている事に注目し、ラフォーレ原宿の掲げるインキュベーションとの親和性を感じたことから 「rhrn」での出店はファッション性の高い良いPOPUPSHOPになると感じ今回に至りました。
–––他スポーツブランドにはないミズノの魅力とは?
やはり研ぎ澄まされた技術力は特別な魅力です。
–––未来のミズノに何を期待しますか?
日本の伝統美に根差した提案など、他のスポーツメーカーに負けない日本の魅力を発信し、ファッショニスタを魅了していってほしい。
About MIZUNO ENERZY
Voice of Running shoes charge staff
冒頭のインタビュー取材でも語られていたように、約2 年をかけて開発されたMIZUNO ENERZYは、柔らかさによって溜められた接地時のエネルギーをロスを少なく反発させることに成功し、ミズノ史上最高の反発性を実現した。編集部タッフも実際に履いてみたが、今まで味わったことのない感触だった。MIZUNO ENERZYの開発に携わったスタッフ2人に話を聞いた。
ミズノ株式会社
グローバルフットウエアプロダクト本部 企画部
ランニング・トレーニング企画課
鷲見将成
–––まず、ミズノを代表するランニングシューズの「ウエーブエアロ18」と「THE MIZUNO ENERZY(商品名)」の違いを教えてください
ウエーブエアロ18は、ミズノランニングのアイデンティティーとして「MIZUNO WAVE」を搭載したウエーブ構造のシリアスランナー向け(サブ3.5)のランニングシューズです。THE MIZUNO ENERZYは、MIZUNO WAVEの搭載はなく、ミズノ史上最高の反発性を実現した新素材 MIZUNO ENERZYを搭載したモデルになります。先日リリースしたTHE MIZUNO ENERZYは、MIZUNO ENERZYを体感していただくための実験用じゃないですけど、コンセプトモデルになります。
MIZUNO “THE MIZUNO ENERZY”
¥25,000+tax
(Released Wednesday, July 1, 2020)
–––コンセプトモデルだったんですね。それでは今後、MIZUNO ENERZYを搭載したランニングシューズが出てくると?
はい。このコンセプトモデルも、もちろんランニングしていただけるような設計にはなっているんですが、我々が手掛けているパフォーマンスランニングとは完全に異なる設計で作られています。今回のモデルは、MIZUNO ENERZYを多くの人たちに認知していただくために限定的に作られたものなんです。
–––THE MIZUNO ENERZYを開発した目的を教えてください
新素材を搭載することで、今までミズノのランニングシューズを履いたことがない方に気に留めていただければと思って開発しました。気になって一度体感してもらえれば、ミズノの特徴が分かってもらえると思っています。今後は、パフォーマンスランニングシューズも徐々にリリースする予定なので、このTHE MIZUNO ENERZYがそのきっかけになればと。また普段履きのスニーカーとしても愛用して頂ければ嬉しいですね。今はパフォーマンスランニングシューズとライフスタイルシューズの垣根もなくなってきていますし。お近くのミズノ直営店でぜひ足入れして体感していただければありがたいです。
ミズノ株式会社
グローバル研究開発部
次長
佐藤夏樹
–––MIZUNO ENERZYの特徴を教えてください
MIZUNO ENERZYには、「MIZUNO ENERZY」「 MIZUNO ENERZY LITE」 「MIZUNO ENERZY CORE」の3種類があります。3つとも共通しているのは、とにかくよく跳ねる。それも柔らかくてよく跳ねる。MIZUNO ENERZYを隅々までたっぷり盛り込んだのが、コンセプトモデルのTHE MIZUNO ENERZY や rhrn 2で「MIZUNO ENERZY」と「MIZUNO ENERZY CORE」が搭載されています。
MIZUNO “THE MIZUNO ENERZY”
(Released Wednesday, July 1, 2020)
–––「MIZUNO ENERZY」と「MIZUNO ENERZY CORE」についてくわしく教えてください
「MIZUNO ENERZY」は、3つのソールの中で最もベーシックなタイプで、自社従来のミッドソール素材と比較すると柔らかさが約17%、エナジーリターンが約15%向上した新素材です。ミッドソールの「MIZUNO ENERZY CORE」は、MIZUNO ENERZYの中でも柔らかさと反発性に最も優れた素材で、従来の素材と比べると柔軟性が約293%、エナジーリターンが約56%向上しています。このモデルには入っていないのですが、「MIZUNO ENERZY LITE」は、3種類の中で一番軽い素材で、今後はシリアスランナー向けのレース用のランニングシューズなどに使っていく予定です。
–––アッパーについても特徴を教えてください
アッパーに関しては、シンプルに仕上げて、MIZUNO ENERZYを十分に体感してもらうために設計を最低限にとどめています。あまり無駄なことはせずに何も付けないで仕上げたっていうのが逆に、このアッパーの特徴と言えますね。構造としては、1枚のニット素材で履き口周りとシュータンを一体にした一体型になっているので、ソックスのようなイメージで非常に柔らかくて、足を入れたらぴたっと足に沿うような、履いていることをあまり感じさせない作りになっています。
–––MIZUNO ENERZYを開発する上で苦労した所を教えてください
私がMIZUNO ENERZYを直接配合したわけでなく、ミズノの中に素材研究チームがあって、そこに配合を担当している素材開発者がいるんです。ミズノは用具発祥のブランドで、野球のバット、ゴルフクラブ、バドミントンのラケットなど、要は打つ用具の反発について100年ぐらいずっと研究し続けていて、未だにもっと飛ぶにはどうしたらいいのか?ということが日々研究されています。そんな中で生まれた「もしかしたらシューズに使えるんじゃないか?」という反発素材があって、元はシューズ用に開発された素材じゃなかったものを、素材開発者が私に持ち込んだことからスタートしました。なので、シューズ用に開発していくのが大変でしたね。
–––今まではシューズに合うベストな反発素材がなかった、ということでしょうか?
ずっと反発性のいいシューズ用の素材を作りたいなとは思っていたんですけど、どうしてもシューズ界の常識にとらわれてしまって、打ち破れない壁がありました。素材開発者にはそういう頭が全然なくて「こんなんできちゃいましたけどどう思いますか?」って最初に持ってきてくれたのが、「MIZUNO ENERZY CORE」(ミッドソール)の原型になる素材だったんです。
–––そこからすべてが始まったんですね
はい。実験するために重りを落としたら、とんでもなく跳ねたんです。私もびっくりでしたけど、素材開発者もびっくりしていて。落とすと大体3割から4割ぐらい跳ねるのが普通の素材で、よう跳ねるなぁっていっても5割から6割ぐらいなんです。この素材は8割ぐらいまで跳ねたので、素材開発者も最初は重りを見失ったらしいです。これはすごいのできたなっていう瞬間でした。
–––完成するまで約2年かかったと聞いています
そうですね。私自身の過去の経験から、最初に持ってきた素材開発者に「もういけるって思ってから、ふた山は来るぞ」って言っていたんです。もう大丈夫って思ってから、多分2回ぐらい超えないといけない壁っていうのが出てくるから、心しておいたほうがいいよっていうのは言っていたんです。そしたらその通りにやってきて(苦笑)。やっぱり来ましたねって言っていました。
–––完成したからいいですけど、完成しない場合はどうなるんでしょうか?
過去に何度もあります。それはもうお蔵入りということになりますね。
–––失敗したらペナルティがあったりするんですか?
ないですね。会社の雰囲気的にチャレンジしていい感じがあって。社風というか。それが新素材開発につながっていると思います。今回の新素材は、シューズの常識にとらわれない素材開発者の発想で誕生したシューズなので、ミズノの技術と社風があってこそのシューズだという自負があります。
–––SHOES MASTER読者へメッセージをお願いします
ミズノに入社以来、シューズの研究開発を20年以上ずっとやってきました。そんな私でも最初にめちゃくちゃ驚いた、化け物というか、異次元の素材がMIZUNO ENERZYなんです。この素材をとにかく体感してもらいたいので、ぜひとも一度、足を入れてもらいたいです。
INFORMATION
MIZUNO
http://www.mizuno.jp/mizuno1906/
ミズノお客様相談センター
0120-320-799