Photo : Kazumasa Takeuchi
Edit & Text : Shin Kawase
Mizuno's global new project "KAZOKU" starts
Shigeyuki Kunii(mita sneakers)Interview
日本が世界に誇るトップスポーツブランド、ミズノがついに動き始めた。2月から通年でグローバルに展開するプロジェクトの名前は“KAZOKU”。その内容は、ミズノが世界各国のスニーカーセレクトショップとタッグを組み世にリリースしてきた膨大なスポーツシューズの中から、厳選したモデルをスニーカーとして現代に蘇らせるもの。その記念すべき第1弾は、なんとミタスニーカーズとのコラボレーションだった。
–––コラボレーションする以前のミズノに対するイメージを教えてください。
そうですね…日本のスポーツブランドの中でも、近いように見えて一番遠い存在でした。イメ-ジは、やっぱり野球ですね。世界の誰もが知っている日本人プレイヤーのバットやグラブなど、スポーツ用具を作る生粋のスポーツブランドっていう印象でした。しかし、数年前にフットウェア取り扱いのオファーを頂いた時はお断りしてしまったのですが、はじめてミズノのスタッフにお会いしたことをキッカケにミズノのブランドフィロソフィーに惹かれ、“MIZUNO1906”をはじめ、パフォーマンス、ハイブリッドモデルなど、プライベートで一通り全部履きました。
–––コラボレーションに至ったキッカケを教えてください。
“MIZUNO1906”というプロジェクトが立ち上がって直ぐのタイミングで、復刻モデルでありながらモダンなソール構造を用いたアイテムを最初に見せてもらったんです。当時の機能を完全復刻しなくても、今だったらこういう作り方で、それ相応のものが作れますよっていう感じの再設計だったんです。運動靴とスニーカーって求める価値観は別物でありながら、シューズ本来のバックボーンは重要じゃないですか。だから正直、その時は興味が湧かなかった。プライベートでも一通り履いた上で、ミタスニーカーズで取り扱うべきではない、と判断したんです。その当時は、ミズノ社内で「スニーカー」という言葉を出すことすら厳禁だった位で…。でも、これからスポーツブランドのスニーカーとして提案していくのであれば、まずはアーカイブをきちんと復刻して、スポーツブランドのスニーカーとしてリリースすべきだと伝えたんです。そうしてしばらくしたら「それを一緒に実現しましょう」という話に発展しました。
–––コラボレーションのコンセプトを教えてください。
コンセプトは、ミズノを代表するようなシリーズや、初代モデル、アイコニックな機能など、スポーツの分野の中できちんとバックボーンが語れるモデルを復刻することです。歴史はお金で買えないので。当時リリースされていたモデルを復刻させることで現在進行形でリリースされている最新モデルとの履き比べができて、日進月歩を自分自身の足で体感できる環境にしたかったんです。比べるものがないものはやりたくなかった。比べられるものが存在し、誰もがブランドの進化と歴史を実感することができるモデル。でないと、過去の歴史を知ってる人にとってはヘリテージだけど、知らない人からしてみればただの知らない昔話になってしまうので。
–––プロジェクト名の“KAZOKU”とは?
今回のリスタートのタイミングで、ヨーロッパとアジアの連動プロジェクトにしようということになりました。今の人達にどうやってミズノのアーカイブを伝えていくか?ミズノのことをキチンと伝えるために、同じ目線でコミュニケーションの取れるスタッフが集まってくれました。その後、ミズノのヨーロッパチームのメンバーを確認したら、他ブランドで一緒にプロジェクトを行なっていた人物や、共通の友人も多いスニーカーショップ出身のキーマンもこのタイミングから参加していたんです。さらにインスタグラムで個人的に注目していた人がヨーロッパチームのプロダクトデザイナーだったり。日本とヨーロッパチームとのリレーションが上手くいくようになって、じゃあっていうので全部が動き出しました。どんどん賛同してくれる人たちが増えてきて、それをコードネームとして“KAZOKU”と呼んでいたのが、そのままプロジェクト名の“KAZOKU”になりました。
–––第1弾コラボレーションモデルのテーマ、コンセプトを教えてください。
1997年にリリースされた“WAVE RIDER”(ウエーブライダー)というモデルで本来のフィールドである競技トラックとタウンユースにおいてのアスファルトをボーダーレスにすることをテーマに掲げました。だからアッパーのカラーリングは、競技場のトラック、一般道に設置されている標識のブルーを採用しています。競技場のトラックには白いラインが引いてあって、アスファルト道路にも白い線がある。そこをボーダーレスに行き来できるものにしたいという思いで白いラインをレイヤーにとらわれることなく左右にまたいで引きました。ソールユニットはアスファルトをイメージしながら、ミズノウエーブというミズノが独自に開発したアイコニックな機能に着目してもらうために、グローインザダーク仕様にアップデートしています。
モールド(靴型)がすでに処分されてしまっていた初代WAVE RIDERを復刻するにあたって、今のソール機能と比べると劣る昔のものを莫大なお金と時間をかけて作る必要性があるのかっていう議論にもなりました。しかし、“KAZOKU”プロジェクトのファーストミッションは、今の人達にミズノの過去と現在をカテゴリーをまたいで体感してもらうことだと考えていたので、その旨をプレゼンして実行に移して頂きました。
–––初めてコラボレーションしてみて分かった、ミズノの魅力とは何ですか?
やっぱり…人ですね。スタッフがみんなすごく紳士的なんです。分からないことを分からないって言ってくれるし、逆に何でも興味を持って聞いてくれるし、ギア的なことは何でも教えてくれます。ミズノが一番かっこいいなと思うのは、「うちはまだまだこれから頑張らなくちゃ」みたいなことをいつも謙虚に言うんですけど、ミズノが他ブランドに勝っているところは具体的にすぐ言葉に出るんですよね。すごく謙虚なのに、でも自分たちはこうなんだっていう自負がある。変なプライドは一切ないんですけど、自分たちのブランドを誇りに思っている所が日本のブランドらしくて魅力的ですね。
実際にプロダクトを一緒に作っていてもそれを感じました。具体的には、バンプに載せたホワイトラインって物理的には簡単そうに見えるんですけど、この部分はパーツが重なっていて、素材も違っていて実は難しい。これを同じクオリティーのプリントで仕上げてくるんです。機能的には意味がないんですけど、同じミッドソールで色を階層で分けて、スペックルプリントの色も変えてとかって、いちいち面倒なディテールの希望を出したんですけど完璧でしたね。僕が想定した以上のクオリティーで仕上がってきてびっくりしました。実は、今後ミズノと一緒にやっていくために敢えてリクエストしたことも多かったんですけど(ミズノができることを探りたくて)…すべて完璧にクリアして戻ってきました。考えたことを形にしてくれる力は半端ないですね。謙虚でありながら、自分たちのストロングポイントはちゃんと理解している。そこがミズノの魅力ですね。
今後、“KAZOKU”プロジェクトは世界中のキーアカウントと一緒にコラボレーションすることになるんですけど、無理難題にも応えて具現化する力がミズノにはある。これからミズノに絡んでくる人たちに対してインスパイアを与えたいって気持ちもあったので、今後のためのベースモデルとしては、「ミズノらしさが表現されている」クオリティに仕上がったと思います。
–––“KAZOKU”プロジェクトの今後の展開、取り組みを教えてください。
このモデルのOGカラーが3月に発売されます。もちろん、ミタスニーカーズでも販売する予定です。あとは、各国のキーマンやキーアカウントが提案するコラボレーションモデルが毎月出てくる感じですかね。“KAZOKU”プロジェクトは、スニーカーショップだけじゃなくて、ファッションブランドや、色々なメディアの人も参加しています。リリースされるモデルは、基本的には全てミタスニーカーズでも取り扱う予定になっているので期待してください。
あと、アシックスとミズノって日本が世界に誇る二大スポーツブランドだと思うんですけど、スニーカーシーンの中で両者を共に提案できることが一番うれしいですね。グローバルのメジャースポーツブランドに、今までアシックスが、1社で対峙してきてたと思うんです。そこにミズノっていうもう一本の柱が出てきた。そうなると多分、今の状況からもっと複雑になるから、もっと楽しくなると思っています。お互い日本のスポーツブランドとは言え、もの作りの根本の考え方もベクトルも全然違うので、その違いも体感してほしいし、逆にいろんな海外ブランドとも比較してみて欲しいですね。
–––読者にメッセージをお願いします。
日本人でミズノを知らない人っていないと思うんですよ。そのミズノがスニーカーシーンに満を辞してエントリーしたので海外メーカーやアシックスなど、色々なブランドを履いているスニーカーヘッズに、ぜひ1回履いてほしいですね。今までライフスタイル、タウンユースでミズノを履く機会がなかったと思うので。
MIZUNO
WAVE RIDER 1 “NO BORDER” “mita sneakers” “KAZOKU”
¥17,800+tax
Mizuno’s global new project “KAZOKU” starts
MIZUNO STAFF Interview
ミズノが世界各国のスニーカーセレクトショップとタッグを組む“KAZOKU”プロジェクトには、ミタスニーカーズ国井氏の知人が2人も参加している。ミズノのヨーロッパ支社に在籍するスタッフ2人にミタスニーカーズについてと、このプロジェクトについて取材した。
Special Thanks : Masato Mouri (MIZUNO)
–
LUCA MARCHET (SportStyle Category Manager)
Interview
–––ミタスニーカーズとのコラボレーションモデルが完成しました。感想を聞かせてください。
完璧なスタートとなりました。 日本の最も本格的なスニーカーストアであるミタスニーカーズとのコラボレーションでスニーカー市場に参加できることは、これ以上ない良いスタートだと思います。
–––ミタスニーカーズは世界中から支持を集めています。その理由はどこにあると思いますか?
ミタスニーカーズの世界的な成功は一つの理由に絞れませんが、ミタスニーカーズとのあらるゆコラボレーション商品には、その背後に真実のストーリーがあり、優れたマテリアルのチョイスがあると思います。 ミタスニーカーズを誰もが尊敬しているのは、彼らのプロダクトには常に現在の日本のストリートカルチャーの彼らなりの解釈が含まれているから。それが支持される理由だと思います。
–––今回コラボレーションするにあたって一番大変だったことは、何ですか?
ミタスニーカーズとミズノという信頼できるプロフェッショナル同士の協業では難しいことは何もありませんでした。もちろんミタスニーカーズはネクストレベルの品質や構造をもたらすためのチャレンジを私たちに求めましたが、ミズノの112年間の経験でこのチャレンジを受け入れ、作り上げることができました。
–––世の中に多数のコラボレーションモデルがリリースされ続けています。ミズノにしか出来ないことは何ですか?(他社には真似出来ないこと)
おっしゃる通り毎週多くのコラボレーションが発売されていますが、違いの一つは製品の品質です。また、パートナーとのコラボレーションがいかに信頼できるか、パートナーシップの背後にあるメッセージの強さが、成功を左右します。そしてもちろん、今回のコラボレーションモデル、WAVE RIDER 1 “NO BORDER” “mita sneakers” “KAZOKU”は、ミズノとミタスニーカーズという、日本のアイデンティティを持ち、伝統的にスポーツと関わり、品質にこだわるという共通の価値観に基づいており、素晴らしいケースと言えます。
–––“KAZOKU”プロジェクトで一番大切にしていることは何ですか?
KAZOKUプロジェクトは、世界で最も優れたスニーカーストアに専用の商品を提供するためのプロジェクトです。最も重要なことは、KAZOKU全員にその一員であると感じてもらうことです。
–––SHOES MASTER一言、メッセージをお願いします。
皆、常にシューズマスターを読み続けています。なぜなら、とてもアイコニックな雑誌であり、日本や世界で何が起きているかを常にアップデートしてくれるからです。ヨーロッパでは、日本のアーバンカルチャーのバイブルとして見ています。
LUCA MARCHET
MIZUNO CORPORATION
SportStyle Category Manager Region EMEA
WESLEY TYRMAN (SportStyle Advisor)
Interview
–––ミタスニーカーズとのコラボレーションモデルが完成しました。感想を聞かせてください。
現代のシーンにおける新しいファンタスティックな取り組みがスタートしたと言えます。112歳の日本のスポーツブランドであるミズノは、20年の歴史を持つウェーブライダー1というモデルでライフスタイル市場に参入します。日本の最もリアルなスニーカーストアであるミタスニーカーズと最初のリリースを迎えます。これは待望の長編映画の始まりのようなものです。あとは、ドラマティックなサウンドトラック、つまりお客さんの反響が必要なだけです。
–––ミタスニーカーズは世界中から支持を集めています。その理由はどこにあると思いますか?
ミタスニーカーズは、独自のカルチャーを長い時間をかけて築きあげてきました。ミタスニーカーズは、スニーカーシーンがスポーツや音楽、ストリートウェアとともに成長してきたことを常に理解し、それを浸透させてきました。このことでグローバルに信頼できる影響力を持つのは当然だと思います。
–––今回コラボレーションするにあたって一番大変だったことは、何ですか?
正直言って何もありません。ミタスニーカーズはこのゲームのオリジナルメンバーの一員であり、コラボレーションという取り組みや、世界のスニーカーシーンでそれがどう力を持っているかを理解しているからです。
–––世の中に多数のコラボレーションモデルがリリースされ続けています。ミズノにしか出来ないことは何ですか?(他社には真似出来ないこと)
スニーカーコミュニティは今や独自のカルチャーで、過去のように他のカルチャーの一部ではありません。そのため常に異なる時代と比較されます。私たちは最も古いスポーツカンパニーの一つですが、今まで過去のアーカイブを掘り下げたことはありませんでした。私たちは多くの人にサプライズを与え、スニーカーシーンに新しい風を吹かせようとしています。私たちは、今まで何をしてきたか、だけでなく、今何をしているかを見ています。私たちの製品は常に最高のものなので、他者には模倣不可能です。
–––“KAZOKU”プロジェクトで一番大切にしていることは何ですか?
私たちの小さなコミュニティは、協力しており、お互いのことをよく知り、それゆえ日本語で「家族」の意味であるプロジェクト名で繋がっています。できる限りピュアさを保ちたいと思っています。
–––SHOES MASTER読者に一言、メッセージをお願いします。
ストリートウエアやスニーカーカルチャーをとことん楽しんでください。自分らしく、好きなものを手に取り、自分自身を表現することを楽しんでください。
WESLEY TYRMAN
MIZUNO CORPORATION
SportStyle Advisor
INFORMATION
mita sneakers
東京都台東区上野4-7-8 アメ横センタービル2F
03-3832-8346
www.mita-sneakers.co.jp
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MIZUNO1906
http://www.mizuno.jp/mizuno1906/
ミズノお客様相談センター
0120-320-799