Photo : Masataka Nakada (STUH)
Edit & Text : Shin Kawase
Mizuno × BUAISOU
JAPAN BLUE Created by Traditional Indigo Dye
Together with Japan's Represent sneaker shops
~ミズノスポーツスタイルが提案した藍染~
8月24日に発売されると瞬く間にソールドアウトした、ミズノと藍師・染師“BUAISOU”(ぶあいそう)の共作モデル。このコラボレーションは、イノベーションとトラディションをテーマに掲げ、日本技術の融合を形にしたもの。日本の最新テクノロジーを駆使するスポーツブランドと、日本の伝統工芸を継承するブランドが、お互いのポテンシャルを妥協することなく最大限に活かして実現した理想的なコラボレーションだった。
Data provided by MIZUNO CORPORATION
Kamiita Town, Tokushima Prefecture
Visit to BUAISOU Workshop
日本の伝統工芸を代表する藍染。
その藍の本場である徳島県上板町に、
世界各国からワークショップの依頼が
殺到している小さな工房がある。
それが2015年に5人でスタートした
“BUAISOU”(ぶあいそう)である。
グローバルで熱烈に支持されている理由は、
藍の栽培をはじめ、染料の蒅(すくも)造り、
染色、デザイン、仕上げまでを一貫して行い、
純粋に自由にモノづくりに徹している場所だから。
その魅力を探るため、
日本屈指のスニーカーショップスタッフと
一緒に徳島にある工房を訪ね、
BUAISOU代表であり、藍師・染師である
楮 覚郎氏を取材した。
About BUAISOU
Kaji Kakuo(BUAISOU)
Interview
楮 覚郎 / BUAISOU 代表&藍師・染師
–––BUAISOUの藍染の最大の特徴を教えてください
藍の栽培から蒅(すくも)づくり、染色、デザイン、製作までのすべてを自分たちで一貫して行うこと。また天然へのこだわりですね。私は常に疑問を持つタイプなので、会社をスタートさせた最初の1年間は藍染めの業界では主流とされる化学肥料を使用していましたが、それさえも見直しました。天然という選択は、害虫や雑草などの環境リスクを伴いますし、化学肥料で作れる大きなサイズの葉や色素の多い葉には利点もあります。
実際、その利点を活かそうとした時期もありました。ただ、元を辿れば、藍は無農薬の天然素材だったわけで、薬草として庶民の生活を支えたり、大切な布を藍色に染めたりしてきました。藍や藍染という伝統が持つ懐の深さは今でも変わらず、そこから生まれる製品の一つ一つが安心感を醸成していくものだと信じています。我々の栽培方法では、化学肥料で栽培するより葉も小さくなりますし収穫量も減ります。でも本来の藍に向き合うと、葉の色数やサイズのことなどの問題ではなく、これまで受け継がれてきた背景も含めて、天然が生み出すものに大きな魅力を感じるんです。
–––今回のコラボレーションモデルのテーマを教えてください
「イノベーションとトラディション」です。ミズノさんから、このキーワードをいただいた時、私たちが大切にしている伝統的な技法と新しいモノづくりの共存という考え方と重なり、強く共感できました。実は、私自身も学生時代に陸上部でミズノの製品を使っていたので、依頼をいただいたときはとても嬉しく、コラボレーションが決まるまで時間はかかりませんでした。ミズノといえば、陸上や野球など、さまざまなスポーツでよく知られる日本を代表するメーカーです。これまでもスポーツブランドとのコラボレーションの経験はありましたが、ミズノさんが私たちをどのように評価してくださっているのか、とても興味がありました。
–––アッパーのテキスタイルデザインも楮さんが手掛けたと聞きました
はい。今回のコラボレーションは、完成品のスニーカーをただ染めるのではなく、テキスタイルをパーツ毎にデザインして、それぞれ異なる技法で染めあげ、後に縫製して商品に開発するという画期的なものでした。前例のないことにチャレンジする分、海外の工場とのやりとりが緻密で大変でしたが、こちらの無理なリクエストに対してミズノのスタッフの皆さんが「無理」と言ったことは一度もなかったんです。それが一番、このプロジェクトに対する熱意を感じたところでした。
–––ランバート(ロゴマーク)部分も全部一枚一枚染めているそうですね
通常、ロゴマークは型取りして本体に縫い付けるのですが、今回は染めで表現するため、正確に配置するパターン作り(型締め)が大きなハードルでした。また、伝統的な群雲(むらくも)技法で染めたため、仕上がりには個体差やムラが出てしまうのですが、コーポレートロゴがそうであっても、こちらの表現を尊重してくれたミズノさんには本当に感謝しています。このコラボレーションを通じて、プロダクトの新たな表現の可能性が広がったのではないかと思います。
–––デザインする上でモチーフにしたものは何ですか?
デザインには、野球やゴルフといったスポーツの要素や、ミズノの創業者の言葉を載せるなど、各パーツにミズノらしさを取り入れています。ミズノのデザイナーさんの提案で、私たちのアイコンである象とランバードから着想を得た鳥のイラストやタグは、私の直筆がそのまま採用されることになり、とても驚きましたが嬉しかったです。
–––最後に今回のコラボレーションの感想を聞かせください。
普段私たちがなかなかリーチできないお客様に、このスニーカーを通じて藍やBUAISOUの魅力が伝わるのはとても新鮮で嬉しいです。藍染には個体差があり、日焼けや擦れによる色移りもありますが、それも天然ならではの良さだと私たちは考えています。そんな藍を皆さんがどのように感じてくださるのか、とても興味があり楽しみですね。
BUAISOUがある徳島県上板町は、吉野川の左岸にあり、江戸から明治時代にかけて藍染めの染料となる蒅(すくも)を供給したことで知られ、その蒅は品質の高さと圧倒的な量から「阿波藍」と称され、全国へ供給されていた藍の産地だった。楮氏らは自分たちで藍を栽培し、刈り取った葉から蒅をつくり、その蒅を発酵させて染液にする藍建(あいだて)を行なっている。残念ながら、コラボレーションモデルはすでに完売しているが、この理想的なコラボレーションの次なる展開にも期待したい。
Kamiita Town, Tokushima Prefecture
Visit to BUAISOU Workshop
Sneaker shop staff experience indigo dyeing
Herringbone Footwear
KICKS LAB.
Kith Tokyo
mita sneakers
YAMAOTOKO FOOTGEAR
BUAISOUの楮氏のインタビューの後には、日本屈指のスニーカーショップ、ヘリンボーンフットウェア、キックスラボ、キストーキョー、ミタスニーカーズ、山男フットギアのスタッフ、さらにミズノのスタッフも加わり、藍染を実際に体験。楮氏の直接指導のもと、生成り色のミズノ ウエーブライダー10を使用して行われた。
取材協力:
BUAISOU
https://www.buaisou-i.com/
MIZUNO HEAD OFFICE&
MIZUNO ENGINE
藍染体験を終えたスニーカーショップスタッフと編集部一行は、徳島県上板町から高速バスで約3時間、ミズノの大阪本社に到着。スニーカー市場でも急成長を遂げているミズノの源泉である大阪本社とミズノエンジンを取材した。
1992年、大阪湾岸エリアに建設されたミズノの大阪本社。ミズノは、1906年に創業者である水野利八氏がスポーツ用具店「水野兄弟商会」を開業した事でその歴史をスタートさせた。創業から120年あまりが経過した現在も、創業者 の言葉、「ええもんつくんなはれや」という”ええもん”を世界に届け続けることをヴィジョンに掲げ、良いものを作り続けている。そんな歴史的な用具が1階には数多く展示してあり、その中央にはスポーツ文化新世紀への熱い心を込めて制作されたクリスタルオブジェ「炎」がそびえ立っている。ミズノ社員は大阪本社のことを「MC」(ミズノクリスタ)と呼ぶ。
MIZUNO ENGINE
ミズノ大阪本社敷地内に、構想5年、総事業費約50億円をかけて建設されたイノベーションセンター、ミズノエンジン。商品開発プロセスにおける「はかる」「つくる」「ためす」をすべて実践でき、研究開発力を強化し、スポーツによる社会イノベーション創出を加速させるための施設だ。
ミズノを象徴するロゴマークであるRUNBIRDは「RUN=健康・スポーツ、BIRD=自由な精神と創造力の拡がり」を意味し、ロゴマークの曲線は惑星の軌道がイメージされ、スポーツのスピード感、あふれる躍動感、無限の広がり、が表現されている。
About
BUAISOU &
MIZUNO HEAD OFFICE&MIZUNO ENGINE
Shigeyuki Kunii (mita sneakers)
国井 栄之 / ミタスニーカーズ クリエイティブディレクター
–––今回のツアーの感想を教えてください
藍師と染師。藍染に至るまでの果てしないプロセスに驚愕しながら、本物であることの難しさとそれを凌駕する志に心を動かされた一日。楮さんを始め、BUAISOUの皆様との会話や体験を通じて、何よりも大切なことを再考する機会にもなりました。
–––他ブランドにはないミズノならでの魅力とは?
水野利八氏が残した言葉「ええもんつくんなはれや」の精神が様々なプロダクトから垣間見えるところ。
–––2024年秋冬のリコメンドモデルとマイベストミズノを教えてください
リコメンドモデル:
WAVE PROPHECY MOC
マイベストミズノ:
WAVE PROPHECY (2011)
About
BUAISOU &
MIZUNO HEAD OFFICE&MIZUNO ENGINE
Yuta Kakinuma (KICKS LAB.)
柿沼 裕太 / キックスラボ マネージャー
–––今回のツアーの感想を教えてください
藍染めという文化に触れる事が初めてで、今回実際に体験できるということで、すごく楽しみにしていました。ミズノ本社では、調べても出てこないことや、実物を見られて貴重な経験をさせてもらいました。
–––他ブランドにはないミズノならでの魅力とは?
日本発祥で100年以上続くブランド。その歴史があるからこそ日本の伝統との結びつきが説得力を生む。
–––2024年秋冬のリコメンドモデルとマイベストミズノを教えてください
リコメンドモデル:
YOKAI PACK
コアな方向けに作られたパック。妖怪をイメージしたカラーがスニーカー好きの心をくすぐる配色で印象に残っています。
マイベストミズノ:
WAVE MUJIN TL GTX
GTXを搭載しているという事もあり、買い付けなどにも履いていく事が多いモデル。アメリカでも声を掛けられたりします。
About
BUAISOU &
MIZUNO HEAD OFFICE&MIZUNO ENGINE
Noa Uchihashi (Herringbone Footwear)
内橋 乃亜 / ヘリンボーンフットウェア スタッフ
–––今回のツアーの感想を教えてください
藍染のプロセスを学び、実際に触れて体験できたこと。ミズノ本社とミズノエンジンで普段は見ることが出来ない貴重な機会に居合わせられたこと。初めての体験の連続で、ワクワクがとまりませんでした。
–––他ブランドにはないミズノならでの魅力とは?
日本の物づくりへの拘り、美しいデザインとテクノロジーを同時に体感できるブランドであるということです。
–––2024年秋冬のリコメンドモデルとマイベストミズノを教えてください
リコメンドモデル:
WAVE PROPHECY LS / BLACK
マイベストミズノ:
WAVE PROPHECY MOC
About
BUAISOU &
MIZUNO HEAD OFFICE&MIZUNO ENGINE
Hiroshi Usoi (YAMAOTOKO FOOTGEAR)
宇曽井 浩 / 山男フットギア プロモーションマネージャー
–––今回のツアーの感想を教えてください
BUAISOUのみなさんが藍と向き合い日々を丁寧に暮らしている姿に感銘を受け、また藍色に染まった手が本当に恰好良く印象的でした。”ええもん”をつくる為の情熱を感じることができ、忘れられない体験をさせていただいた素晴らしいツアーでした。
–––他ブランドにはないミズノならでの魅力とは?
スポーツに対して真摯に向き合っていながら、洒落の効いたものづくりをしている所です。ノンアルビールには驚きましたが最高でした。
–––2024年秋冬のリコメンドモデルとマイベストミズノを教えてください
リコメンドモデル:
WAVE MUJIN TL GTX / BEIGE
マイベストミズノ:
WAVE RIDER 10
取材協力:
ミズノ株式会社 大阪本社
大阪府大阪市住之江区南港北1-12-35
https://corp.mizuno.com/jp
Herringbone Footwear
東京都港区虎ノ門2-6-3 虎ノ門ヒルズ ステーションタワー 3F
03-3528-8262
herringbonefw.com
KICKS LAB.
東京都渋谷区神宮前4-32-4 1F
03-6459-2124
www.kickslab.com
Kith Tokyo
東京都渋谷区神宮前6-20-10
MIYASHITA PARK North 1F/2F
03-3831-5154
https://kithtokyo.com/
mita sneakers
東京都台東区上野4-7-8 アメ横センタービル2F&1F路面店
03-3832-8346
www.mita-sneakers.co.jp
YAMAOTOKO FOOTGEAR
東京都台東区上野4-8-15
03-3833-9009
www.yamaotoko.jp