Photo : Osamu Matsuo (STUH)
Edit & Text : Shin Kawase

The long-awaited MADE IN JAPAN is back
Special Feature 2021 SPRING
“PUMA SUEDE VTG MIJ SILVER”

今なお世界中に多くのファンが存在するプーマの絶対的なアイコン、プーマ スウェード。誕生から半世紀以上。プーマ スウェードの最高峰モデルとの呼び声が高い“PUMA MIJ”(MADE IN JAPAN)が待望の復活を遂げる。吉報を聞いた編集部は、その全貌を取材した。

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The story behind the birth
of PUMA SUEDE (MADE IN JAPAN)

Sneaker Tokyo Vol.3
“Puma as You’ve Never Seen them Before” 
SHOES MASTER編集部 編著
2010年8月20日発売

“PUMA MIJ”(MADE IN JAPAN)を紹介する前に、なぜ今、MIJのプーマ スウェードがリリースされることになったのか?そのいきさつを振り返ってみると、弊誌の拙著『Sneaker Tokyo』で取材した記事がすべての始まりだった。本書籍は約10年前に発売したもので、第三刷まで発行。日本語と英語のバイリンガル編集だったため、海外からの注文も多く、その反響の大きさから中国版(北京語訳)も出版されるなど、その当時スニーカーマーケットでも話題を呼んだ。今回はそこに掲載した記事全文を紹介する。

MADE IN JAPAN
Japan model factory

1948年にスタートしたプーマ。創始者ルドルフの愚直なまでの職人気質は、現在も脈々と受け継がれている。 その精神は、海外ブランドのほとんどがアジア諸国を生産拠点に置くシューズ業界において、今でも日本生産を続けることで継承されている。 あえて公表されていないが「メイド・イン・ジャパン」が存在する稀有なブランドなのである。その総本山、関西にある工場をレポートする。

Staff Interview

デザイン企画開発責任者スタッフ
Design Planning and Development Director

「MADE IN JAPAN」のタグを見なくても、日本製だとわかる靴を作らなければならない。

–––いつからプーマの生産を行っているのですか?
昭和53年(1978年)。今年で33年目になります。工場自体は、昭和2年(1927 年)設立です。

–––世界の工場と日本工場の違いを教えてください
ここの場所は、レザーの産地でもあるので、独特な素材、レザーの細やかな色出し、藍染など豊富な素材が揃えられるところが最大の特徴だと言えると思います。元々、ゴム製品から始まったのですが、現在に至るまで、あらゆる靴を作っていますから、そのノウハウがある。普通は、レディースや紳士靴など特化している工場がほとんどなので。これは日本ではうちだけです。世界でもおそらくないと思います。何でも作れる、世界一のオールラウンドプレイヤー工場といえるかもしれません(笑)。

–––こちらの工場でしかできない匠とは?
自分で言うのもなんなのですが、「あらゆる靴を手掛けているので、バランスのとれた靴を作れる」というところでしょうか。例え ば、1枚のデザイン画から、10人のデザイン技師がいれば10パターンの靴ができるのですが、その中でも「今の時代に合ったバランスのとれた靴を作れる」という自信はありますね。しかし、単純に生産コストや労働力環境を考えると、日本はアジアと同じ土俵ではなく単に比べられない。だから、日本人古来の繊細さや真面目さを生かした靴作り、トータルのクオリティを追求していきたい。単純にステッチや裁断が綺麗という次元ではなく、目に見えない感性としてのクオリティを上げていきたい。比べた時に本当に雰囲気が違うもの。靴の佇まいから感じてもらえるもの。それが大事だと思っています。今、日本製の靴が人気と聞きますが、私は単純に「日本製は丈夫で長持ち」という盲目的なブームで支持されている気がします。だから、感性で認めて買ってくれているわけではない。極論を言えば、「MADE IN JAPAN」のタグを見なくても、日本製だとわかる靴を作らなければならない。パッと見で感じてもらえる圧倒的な雰囲気。そうなって初めて世界でも勝負できると考えていますし、それを目指しています。

–––プーマのプロダクトの魅力は何でしょうか?
私のイメージはどこまでいってもサッカースパイクなんですよね。ジーコ、三浦カズさんなどのサッカースパイクも作っていましたし、「Do」のスポーツのイメージが今でも強くあります。だからどんなにドレッシーな靴を作っても、その根底にはスポーツの精神が入っている。具体的には機能性。運動靴はあくまで道具なので、それは変わりませんね、どんなスニーカーであっても。それが最大の魅力だと思っています。

–––「メイド イン ジャパン」を愛好する世界のプーマニア(愛好家)に一言
一人の作り手として、「履けなくなるまで履いてもらえる靴」を今後も作っていきたい。メッセージはなくて、逆に履いている人と交流を持ちたいですね。色々な意見や感想を聞いてみたいといつも思っています。

工場の基本理念

現状に満足してはならない
常によりよさを求めて努力するところに
進歩があるのだ

この言葉どおり、工場で働くスタッフは、黙々と自分のパートを、スピーディーかつ丁寧にこなしていく。最新の機械を導入しているらしいが、結局は人の手による作業が圧倒的に多い。手で出来ないことを機械にやってもらっている感じ。率直な印象としては「ハンドメイド」であった。スタッフ一人ひとりの技の積み重ねがプーマの 「メイド イン ジャパン」を支えている。

レポートを終えて
今回の取材ではっきりしたことがある。いい靴を作ること。それは機械や設備、手先の器用さも重要な要素なのだが、何よりも作り手の精神がもっとも大切であるということ。だから、匠とは「自分の理想を追い求める妥協なき精神」だということ。その後に技術がある。自分の理想をカタチにするためのあくなき探究心、情熱が「日本の匠」のすべてであった。

The long-awaited MADE IN JAPAN is back
Special Feature 2021 SPRING
“PUMA SUEDE VTG MIJ SILVER”

拙著『Sneaker Tokyo』での取材から約10年。2021年から新たにリリースされるMIJが編集部に届いた。このフォルムを見た瞬間、懐かしさがこみ上げ、また工場を取材したいと思った。しかし、現在はコロナウイルスの影響で県をまたぐことも憚れる状況。当時取材したスタッフの意志を受け継いだ、工場の開発責任者をリモートでインタビューした。

PUMA SUEDE VTG MIJ SILVER (2021) Silver

PUMA SUEDE VTG MIJ SILVER (2021) Black

 

About
“PUMA SUEDE VTG MIJ SILVER”
Factory Development Manager
Interview

–––まずMIJのアッパー素材の特徴を教えてください
弊社のある兵庫県姫路市は、姫路レザーと呼ばれるように、市自体がレザーの一大産地になっていて100社以上のタンナー(皮革製造業者)が存在しています。各社がそれぞれ独自のノウハウを持っていますし、素材であるレザーも、牛革の柔らかめのレザー、オイル感の強いレザーなど、オリジナリティのあるレザーを色々と出しているんです。そういった意味ではレザーの選択肢が多くて多様性があるんです。我々は、パーツによっては違うものもありますが、ほぼ地元の姫路レザーを使っています。

–––今回のMIJのアッパー素材は?
今回のMIJのアッパー素材としては、スウェードの毛足にこだわって採用しました。レザーは通常、問屋さん経由で買うことが多いのですが、我々はタンナーさんに直接出向いて、担当者とフェイス・トゥ・フェイスで調達しています。今度、こういう企画がやるので、こういうレザーを探していて、こういう雰囲気で作ってくれって言えるんです。今あるレザーをただ手配して探すだけではなくて、色々なリクエストを出して加工して作ってもらっています。

–––加工まですべて地元できるとはすごいですね
加工もそれぞれのタンナーさんによって得手不得手があるので、得意そうな所を選んで話を持って行きます。なのでMIJのアッパー素材は、地元姫路の豊富な選択肢と、卓越した加工技術を吟味した上で作られていることが特徴と言えます。

–––MIJと海外産プーマ スウェードのシルエットの違いはありますか?
MIJのシルエットは、ラストに忠実な立体感が出るように常に気を付けています。

–––MIJは特段にシルエットが綺麗ですよね
シルエットが綺麗っていうのは、ラストの形がきちんと表現されているってことなんです。完成した靴の姿を見ていただいたら、何となく分かるかなと思いますけど。

–––同じラストを使っても作る工場によってシルエットが異なる、と聞いたことがあるのですが
そうですね。形を整える「吊り込み」によって変わりますね。もちろん、パターン(型紙)あっての吊り込みですし、素材あっての吊り込みですけど。

–––御社がラストに沿って綺麗なシルエットの靴を作る「吊り込み」の技術があるってことですよね?
一応、そうですね(笑)。私たちも同じラストで作りますが、アッパーのパターンは独自に私が切るんです。それによって、パターンあっての吊り込みで綺麗なシルエットが実現できるんです。ドイツのプーマ本社のスタッフから「同じラストを使っているのに、なんでこんな綺麗なシルエットになるのか?何でこんなにも違いが出るのか?」って聞かれたこともあります。

–––まさに「匠の技」って感じですね
そうやってお褒めの言葉をいただいた時に考えたんですけど、靴の開発、企画っていうのは、通常はそれぞれが分業して作っているんですね。ラストを作る専門の人がいて、アッパー素材を決める専門の人がいて、パターンを切る専門の人がいてという形で分業して作っていきます。でも、プーマさんに関しては、私が最初から最後まですべての生産過程に携わって、全部チェックして作っているんです。分業ではなく全体をトータルに見て、作っていけるところが海外産(アジア)のプーマ スウェードとの差別化につながっていると思います。

–––シルエットだけでなくMIJは独特な履き心地ですよね
ありがとうございます。履き心地に関しても、やはりラストにきっちり沿った靴が作れることが一番だと思います。それと、アッパー素材の持つ柔らかさとの相性もある。その辺がしっかりできていると、足入れした瞬間にすっと入って、海外産とは違う独特な履き心地になるのだと思います。

–––MIJを生産する上で一番こだわっていることは何ですか?
重複しますけど、一番はシルエットですね。あまりかちっとしたシルエットでもなく、かといって崩し過ぎてもいないっていう。それには、素材の良さを殺さないことが大切で、温度管理をはじめ色々な工程で気を付けています。素材感もしかりですが、海外産(アジア)との違いをシルエットで出せないとMIJの意味がないので。

–––MIJを生産する上で一番苦労した所を教えてください
一番は、名前にもなっているスウェード素材の風合いをMIJらしく仕上げることですね。特にシルバーは、スウェードに合うちょうどいいシルバーってなかなか無いんです。MIJのシルバーを上品で落ち着いた感じの風合いに仕上げるには、素材を選ぶのも大変ですが、すべての生産過程でその都度、風合いを微調整しています。

–––復活するMIJをどんな方に履いて欲しいですか?
復活ということもあるので、まずお待たせしたコアなファンの方に。あと、しばらくお休みしていて、MIJを知らない方も結構いらっしゃると思うので、MIJを知らない若い方にもぜひ一度、履いていただければうれしいです。

–––最後にSHOES MASTER読者へ一言お願いします
ドイツ・プーマのアイデンティティと、日本の物づくりが融合して生まれたのがMIJです。素材、パターン、シルエットという視覚的なクオリティはもちろん、履いた瞬間に直感的に体感できる一足になっています。さすがMIJだな、メイド・イン・ジャパンだな、私たちの工場の靴だなって思っていただけるような物づくりをしています。ぜひこの機会に多くのユーザーの方に体験していただきたいと思います。本当は海外のスニーカーファンの方にもと思っていたのですが…コロナ禍がまた大変な状況で残念です。

PUMA SUEDE VTG MIJ SILVER (2021)
Silver, Black
¥18,500+tax
(1月23日発売)

販売店舗:
・ABC-MART Grand Stage
・atmos
・BILLY’S ENT
・BOSTON CLUB
・KICKS LAB.
・Magforlia
・mita sneakers
・Sneakersnstuff
・UNDEFEATED
・UPTOWN
・プーマストア(原宿、大阪、京都、福岡、サッポロファクトリー、ららぽーと富士見)
・プーマ公式オンラインストア

PUMA SUEDE VTG MIJ SILVER(2021) Silver

PUMA SUEDE VTG MIJ SILVER (2021) Black

 

2021 SPRING
“PUMA SUEDE VTG”

2021年はプーマ スウェード復活の年。日本生産のMIJだけでなく、海外産(アジア)の“PUMA SUEDE VTG”(プーマ スウェード ヴィンテージ)もリリースされる。プーマ スウェード ヴィンテージは、究極のオリジナルディテールの再現を目指してデザインされたモデル。特徴としては、トゥキャップ周りのバランスが再調整され、サイドのロゴやシュータンなど、よりオリジナルに近いディテールとなっている。MIJのシャープなシルエットとは異なり、やや丸みを帯びたシルエットだが、これはこれでストリートっぽくて雰囲気がある。日常的にガンガン履いて履きつぶしたい感じだ。どれか一足というよりは、コストパフォーマンスも優れているので可能なら全色買いしたいとこである。

PUMA SUEDE VTG / Red
¥10,000+tax

PUMA SUEDE VTG / Peacoat
¥10,000+tax

PUMA SUEDE VTG / Black
¥10,000+tax

PUMA SUEDE VTG 3Color
¥10,000+tax
(1月30日発売)

INFORMATION
プーマ お客様サービス
0120-125-150
www.puma.com

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