Photo : Osamu Matsuo
Text & Edit : Issey Enomoto

JAPANESE
BRANDS #02
MIZUNO

Part 2_Present and Future of Mizuno
ミズノの現在と未来を探る。
ミタスニーカーズ国井栄之とミズノ齊藤健史の対話。

ミズノスポーツスタイルの中心人物である齊藤健史と、『ミタスニーカーズ』の国井栄之。これまで数多くの話題作を生み出してきたふたりは、いまなにを思い、どんな未来を描いているのか。

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Shigeyuki Kunii (mita sneakers)&
Takeshi Saito (Mizuno)

左:国井栄之/ミタスニーカーズ クリエイティブディレクター。1976年生まれ。東京・上野のスニーカーショップ『ミタスニーカーズ』のディレクションを手掛けるほか、ジェンダーニュートラルをコンセプトに掲げるベイクルーズのフットウェア専門の新業態『ヘリンボーン』に外部ディレクターとして携わる。
右:齊藤健史/ミズノスポーツスタイルの企画担当。2017年ミズノ入社。KAZOKU やrhrnをはじめ、数多くのプロジェクトを手掛けてきた。

コラボレーションがスタートした経緯。

–––ミズノと『ミタスニーカーズ』はこれまで数々のコラボレーションを展開してきましたが、そもそも両者がつながったきっかけは?
齊藤 ミズノは真面目に実直にスポーツ用具の品質向上を追求し続けてきたメーカーです。国内外の人気ブランドがしのぎを削るスニーカーマーケットに参入するのは簡単なことではありません。この分野の第一人者の方の協力を得ないことには、そこに割って入っていくのは難しい。そう考えて、スニーカーのカルチャーやマーケットを熟知する国井さんに声をかけさせてもらったんです。

国井 そもそもの話をすると、これは齊藤くんがミズノに入社する前の話ですが、2015年のある日、当時のミズノの担当者から突然連絡があって。ミズノでスポーツスタイル部門を立ち上げるので話を聞かせてほしい、本音で意見をぶつけてくれないか、と。そういわれたので、なぜいまミズノがスニーカーをつくるのか、ミズノでスニーカーっていわれても全然ピンと来ないんだけど、みたいなぶっちゃけトークをさせてもらって。

齊藤 手厳しいですね(笑)。

国井 いま思えば、忖度抜きで言い過ぎたかも……。でもそれは本気の裏返しで。実は、それまで『ミタスニーカーズ』はミズノと一切関わりがなく、個人的にもスポーツブランドでもっとも遠い存在だったんです。担当者といろんな話をするなかで、こちらからも質問を投げかけました。ナイキなら「エアマックス」、アシックスなら「ゲルカヤノ」といった現在進行形のシリーズがあるけれど、ミズノにとってそれはなんですか、と。そうしたら、「ウエーブライダー」です、と即答されて。ウエーブライダー? 正直それもピンと来ないなと思いつつ、ではその初代を見せてくださいとお願いして、当時のカタログを見せてもらったら、想像以上のモデルだった。ミズノのアーカイブにはこんなに魅力的なシューズがあったのか、と心底驚いたんです。それを機に、大げさではなく、ミズノに対する見方が変わりました。そこからミズノとのリレーションが始まった感じですね。

上は1997年に誕生した「ウエーブライダー 1」の当時のオリジナル。2018年に復刻版が登場。下は2006年に誕生した「ウエーブライダー10」の当時のオリジナル。2020年に復刻版が登場。

–––それが2018年リリースされた『ミタスニーカーズ』とのコラボレーションモデル「ウエーブライダー 1 “NO BORDER”」へと発展していった、と。
国井 はい。いざ復刻しようとなったとき、「ウエーブライダー 1」のソールに搭載されたミズノウエーブを構造として機能させるか、ただのデザインとして見せるかの議論になって。ぼくは、構造として機能させるべきだ、と主張しました。もちろんコストはかかるけれど、お客さんに機能を体感してもらわないと意味がない。ミズノのルーツはスポーツ用具。機能を埋め込むことはアイデンティティであり、そこに「らしさ」が生まれると考えたからです。

MIZUNO WAVE RIDER 1 NO BORDER mita sneakers(2018)

–––あの「ウエーブライダー 1」はミズノがスニーカーシーンで飛躍する大きな転機になったように思います。
齊藤 おっしゃるとおりです。あれをきっかけに、いろいろと動き始めました。ただ、誤解を恐れずにいえば、コラボレーションはあくまでもきっかけに過ぎません。一般的に、コラボレーションにおいて、コラボレーターの方はそのモデルをかっこよくしたいというところで完結します。通常のコラボレーションはそれでまったく問題ありません。むしろそれが狙いですから。しかし国井さんは、それをインラインへどう落とし込むか、そしてインラインではどう見せたらいいのかまで、当たり前のように考えてくれる。それが私たちにとって非常に大きく、国井さんから得られる学びは計り知れません。

国井 ぼくら小売業にとって、本業はコラボレーションすることではなく、インラインを売ること。インライン展開まで視野に入れて考えるのは当たり前で、特別なことではありません。

ミズノがコラボレーションを仕掛ける狙いとは。

–––ミズノは『ミタスニーカーズ』のようなスニーカーショップだけでなく、マーガレット・ハウエルやノンネイティブといったファッションブランドともコラボレーションを展開していますよね。その狙いは?
齊藤 ミズノにとってファッションブランドも大切なパートナーです。以前、国井さんが話していたのですが、スニーカー好きの人たちは一日の始まりに、どのスニーカーを履くかを決めてから、その日の服装を決める。一方、ファッション好きの人たちは、その日の服装を決めてから、足元を決める。順番が逆だから、スニーカーに求めるものも全然違う、と。たしかにそのとおりだと思います。でも、だからといって、私たちはどちらかにターゲットを絞るようなことはしません。ミズノとしては、ファッション好きとスニーカー好きのどちらにもアプローチしていきたい。そして、どちらの要望にも応えられる自負があります。

–––国井さんが今後、ミズノと取り組んでいきたいのはどんなことですか?
国井 これまでのミズノはメンズに偏っていた傾向があり、ウィメンズの取り込みが課題となっていました。でも、ぼくが外部ディレクターを務めるベイクルーズのショップ『ヘリンボーン』がオープンしたことで、ジェンダーを問わない訴求ができるようになった。これは今後のミズノにとって重要な意味を持つはずです。

齊藤 ありがとうございます。国井さんの視点は、常にぼくらのはるか先をいっています。これからも新しい挑戦をぜひごいっしょさせてください。

My Favorites

国井栄之が選ぶ「マイベストミズノ」。

ミズノのスニーカーのなかで、
国井が特に気に入っているモデルとは?
数ある私物のなかから5 足を厳選してもらった。

1. MIZUNO SETTA C/6 “Made in JAPAN” “YAMATO KOBO”(2022)
2. MIZUNO WAVE PROPHECY MOC(2023)
3. MIZUNO WAVE RIDER 1 “NO BORDER” “mita sneakers”(2018)
4. MIZUNO WAVE RIDER 10 “HIGHSNOBIETY”(2022)
5. MIZUNO MONDO CONTROL MTXIX “MTXIX × MOMOIRO CLOVER Z × mita sneakers”(2020)

1.「奈良発の雪駄ブランド、大和工房との共作。日本古来の履物にスポーツブランドの技術やノウハウが織り込まれています。ミズノのモノづくりに対する姿勢やプロダクトしての完成度の高さに脱帽です」 2.「ウエー ブプロフェシーシリーズのライフスタイル向けモデル。革靴の佇まいながらフィッティングにこだわり、スポーツブランドならではの進化を付加させたモダンな1足です」 3.「陸上競技場とアスファルトをボーダレスにすることをコンセプトに、ウエーブライダー1をアレンジ。国内外のスニーカーシーンにミズノの技術革新とクラフトマンシップを認知させるきっかけとなりました」 4.「HIGHSNOBIETYとのコラボレーション第3弾。タウンユースにおける履き心地のチューニングバランスに定評があるウエーブライダー10に独創的なカラーパレットが融合し、よりファッショナブルにアレンジされています」 5.「付け替え可能なランバードラインが目を引くこちらは、野球の田中将大選手、ももいろクローバーZをコラボレーターに迎えたスペシャルエディション。男性運動靴としてのイメージが強かったミズノにおいて、ジェンダーや年代の垣根を超越する役割を果たしました」

※本記事は、『SHOES MASTER』Vol.41(2024年3月29日発行)の特集記事を再編集したものです。

取材協力:ミズノ株式会社

INFORMATION
ミズノお客様相談センター
0120-320-799
jpn.mizuno.com/mizuno1906

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