Photo : Soma Doi (STUH)
Edit & Text : Shin Kawase
BILLY’S ENT 10th ANNIVERSARY
BILLY’S ENT 10year Legacy and Future
~ビリーズが歩んできた10年とこれから~
2014年4月25日。「Tokyoから世界へ洗練された本質だけを発信し続ける」をコンセプトに渋谷からスタートしたビリーズ。かつてなかった高感度な店舗として、スニーカーファンのみならず、多くのファッショニスタからも支持され、今や国内15店舗を構える日本を代表するスニーカーセレクトショップだ。ビリーズが残した10年の軌跡を振り返りながら、これからの展望を取材した。
BILLY’S ENT 10th ANNIVERSARY
Shinji Kai (BILLY’S ENT Director)
Special Interview
at BILLY’S ENT TOKYO SHIBUYA
甲斐慎二 / ビリーズ ディレクター
ショップコンセプト、バイイング、内装、WEB、プロモーション、接客に至るまでビリーズに関することの全てを取り仕切るビリーズのディレクター。熊本出身の頑固な「肥後もっこす」としても知られ、一切の妥協を許さないそのスタンスはシューズ業界でも一目置かれる存在。
「肥後もっこす」
純粋で正義感が強く、一度決めたら梃子(てこ)でも
動かないほど頑固で妥協しない男性的な性質を指す。
激しい性格でも陰険ではなく、南国らしく大らかで明るい。
半面、不器用なところがあるのは否めない。
きまじめで純真な熊本県人は、裏技や小細工といった
ものとは無縁である。
出典:Wikipedia
10年後にこうなることを
想像できたスタッフは
誰一人いなかった
–––スタートから10年が経ちました。率直な今の心境を教えてください
ビリーズというお店をなんとか続けられたこと。それが何より嬉しい、というのが率直な気持ちです。
–––10年で一番思い出に残っている「いい出来事」ことを教えてください
これまでいろいろありましたが、今でも鮮明に覚えているのは、このお店(渋谷)のオープン時かもしれません。お店の外に大勢の人だかりができていて…。当時はスニーカーブームが再燃し、アディダスがブーストやNMDなど、次々と新しいモデルをリリースしたり、45周年企画でファレルとのコラボレーションが大きな話題になったり。10年前にはそうした背景を味方に、ビリーズはこれまでにないプレゼンテーションで、大きなインパクトを与えられたんだと思います。従来のスニーカーショップのように、スニーカーをひしめき合うように並べるのではなく、間隔を空けて余裕のある陳列にし、内装やBGMにもこだわり、スニーカーが主役でありつつ、カルチャーを感じられるお店。海外ではよく見るスタイルですが、当時の日本ではまだ珍しかったので。
今では、ビリーズ別注モデルを履いて来店してくれるお客様も多いです。ビリーズから発信したものを愛してくれ、スタッフのコーディネートから感化されるお客様もいて「店員さんの履いているスニーカー、良いですね」なんて会話を耳にした時は「良い店になったんだな」と、感慨深いです。今では15店舗にもなりましたが、当初は店舗数を増やす計画はなく、とにかく最初の店舗に全勢力を注いでいたので、10年後にこうなることを想像できたスタッフは誰一人いなかったと思います。
BILLY’S ENT 10th ANNIVERSARY
“Best Shoes 10” by
Shinji Kai (BILLY’S ENT Director)
コロナ渦中は、
渋谷、表参道に人がいないという、
見たことのない光景が広がっていた
–––10年で一番大変だった思い出を教えてください
やはりコロナが大きな出来事でしたね。お店は営業していましたが、渋谷、表参道に人がいないという、見たことのない光景が広がって、本当にゴーストタウンのようでした。外出ができない分、オンラインが軸となり、売り上げの部分ではなんとかカバーできていましたが。当時、会社勤めの方はオンラインミーティングが主流となる中で、画面上での印象を意識する方が増え、襟付きのポロシャツが売れたり、靴業界では在宅勤務が増えたことで、コンビニに行くためにサンダルの売り上げが伸びたりと、コロナ禍で様々な変化がありましたよね。ただ、スニーカーはその影響をあまり受けず、むしろ愛好者の存在が際立ち、その価値を改めて実感しました。もちろん、ビリーズから購入する安心感というブランド力も影響していたと思いますが、スニーカーは洋服と違い、ブランドの数が限られ、ブランドロゴなど一目でわかる要素が大きいため、比較的選びやすく、我々売る側としても売りやすい。ライフスタイルの変化とともに、ファッションアイテムとしてスニーカーを選択する場面が多くなり、一人が所有する足数も増えたと思います。逆にリセールマーケットや、個人売買など、これまでとは違ったかたちでの需要が生まれた状況もありましたね。
–––10年で一番変わったことを教えてください
10年はあっという間でしたが、その間にコロナ禍を経験し、さまざまな変化がありましたね。コロナ禍前は、ビリーズの売り上げはリアル店舗とEコマースはほぼ半々でした。Eコマースは海外向けの販売は行っていないため、お客様はほとんどが日本国内の方か、日本に滞在している中国の方の利用が多かったのですが、コロナ禍を経て、タイやインドネシアなど東南アジアのお客様が大幅に増えました。
現在は、世界中の人をフラットに分け隔てなく、
同じスタイルで接客することが求められている
リアル店舗では、インバウンドも戻ってきて、地域ごとに異なる特徴が出ています。東京は、米国や欧州の方はもちろんですが、東南アジア諸国の方々が増えて、札幌では雪国観光を目的に訪れるタイの方が多く、大阪では韓国や中国のお客様が多い。福岡は韓国と距離的にも近い台湾の方々ですね。最近は、対象となるお客様が日本人だけでなく、世界中から来るので、フラットに分け隔てなく、同じスタイルで接客することが大切で、それを自然にできることが我々に求められていますね。
–––SNSの影響は大きいですか?
はい。インバウンドの方々が日本でもSNSを利用することで、売り上げにも好影響が出ていると実感しています。10年間でSNSでのプロモーションも急速に進化し、以前よりも無視できない存在となりました。SNSが登場した初期には、発信側が用意したコンテンツをインスタグラムやフェイスブックなどで定期的にアップし、ユーザーは能動的に情報を得るという、比較的シンプルな流れがありました。しかし、ここ数年でインターネット広告が大きく変化し、情報拡散の手法も進化しました。それによって運用側も専門のポジションを用意するなど、リソースを割いていく必要性が出てきているんです。現在ではTikTokなどが主流となり、SNSの選択肢が増えたので、多様化するユーザーへのアプローチは今後もっと大事になってくる部分だと思います。
–––円安や物価上昇の影響はどうでしょうか?
ここ数年の円安や材料費の高騰もかなり懸念しています。実際商品の値段もかなり上がりました。インバウンドの恩恵はありますが、国内消費は今後ますます減少するのではないかという心配もあります。それでも買いたいと思っていただける商品をしっかり提供していければと思っています。
今は人によって、
スニーカーとの向き合い方も
様々になってきている
–––10年間でお客さんの層に変化はありますか?
コア層は30~40代と比較的年齢層が高めで、おかげさまでオープン当初からの顧客の方も今なおご来店いただいています。男女比は6:4で、以前の8:2から女性の割合が増えました。今は女性主導でトレンドが動く時代なので、プロモーションもそれを考慮したプランニングが必要です。また、以前は一足のスニーカーを大事に最後まで履き潰すことが醍醐味でしたが、今は人によって、スニーカーとの向き合い方も様々になってきていると思います。コレクションする人、服やライフスタイルに合わせて履く人、短時間所有して売る人など、昔と違って個人の手元でリアルタイムに情報を入手できるところが、昨今の面白い現象になっているのかなと思います。これも時代の流れですね。
–––これからのビリーズの展望を教えてください
展望としては、リアル店舗の拡張です。路面店をキーエリアに出店できているので、今後は施設内のインショップも可能性があります。ECではビリーズオンラインを充実させていきたいですね。まだまだマーケットが大きいですし、可能性があると思います。コロナ禍が収束し、リアル店舗の活性化が進む中で、リアルとオンラインの棲み分けはとても重要ですね。同じことをやっても意味がないので、それぞれの特性を見極めながら様々なニーズに応えていけるようにプランニングしていきたいです。
今後も、メジャーブランド、
人気モデル一辺倒でもなく、
面白いと思ったブランドと組んで、
常に新しいことに挑戦していきたい
–––こらからのラインナップはどのように構成される予定でしょうか?
常にお客様に面白いものを提供したいという気持ちは、これからも変わりません。店舗によって地域性も大事にしていきたい部分ですし、奇を衒うわけでもなく、メジャーブランド一辺倒でもなく、本当の意味で上質な商品をお届けできればと思っています。
コラボレーションに関しても売れるブランドや人気のモデルだけでなく、面白いと思ったブランドと組んで、常に新しいことに挑戦していければと思っています。買った瞬間だけでなく、何年か後にまた履きたいと思えるような商品を提供する、自分たちの感覚を信じて、素直に良いと思った理想を掲げて形にしていきたいですね。長い目で見てお付き合いいただけるお店を目指していますので、今後のビリーズにもご期待ください。
BILLY’S ENT 10th ANNIVERSARY
“Best Shoes 10” by SHOES MASTER
–––最後に10月に10周年イベントを開催予定だと聞きました
10月19日(土)20日(日)の2日間、10周年の記念イベントを東京タワー周辺特設会場で行います。これまでの10年間の集大成として、ビリーズには欠かせないメーカーさんたちにもご協力いただいています。これまで積み上げてきたものは単なるスニーカーの販売に留まらず、それを取り巻くカルチャーを生み出すことにも繋がると思っています。今回のイベントを通じて、そんな雰囲気が皆さんに伝わればいいなと。ビリーズを知らないお客様が対象で、商品がメインではなく、良い音楽を流して気軽に楽しめるイベントなので、ぜひたくさんの方にお越しいただければと思います。
BILLY’S ENT 10th ANNIVERSARY “GEL-NYC BILLY’S ENT”
BILLY’S ENT 10th ANNIVERSARY “GEL-NYC BILLY’S ENT”
10周年記念イベント会場で販売されるアシックスと共作したビリーズ10周年記念別注カラー。10年の想いが込められたビリーズらしい一足。
取材協力:
BILLY’S ENT TOKYO SHIBUYA
東京都渋谷区神宮前 6-23-7
03-5466-2432
11:00 – 20:00
INFORMATION
BILLY’S ENT ZOZOTOWN
https://zozo.jp/shop/billysent/
BILLY’S ENT ONLINE
https://www.billys-tokyo.net/shop/